有彩色光の半値幅とピーク波長と色印象に関する光暴露条件を整理するとともに、直接光による有彩色光周波数帯域制御が睡眠介入に及ぼす影響を調査し、その効果・精度を評価した。実験では、心理学的指標であるRASの眠気は、どちらの光でも上昇したが、特に狭帯域光の方が上昇した。一方、RASのリラックス、緊張、意欲低下は、狭帯域光では変化がなかったが、広帯域光では緊張が緩和された。アルファ波含有量は、狭帯域光で計算課題の終了に向かって上昇する軌跡を示し、眠気とリラックスの増加を示した。HF含量は、どちらのタイプの光でも全般的に減少パターンを示し、眠気の抑制を示唆した。鼻部皮膚温度はすべての光条件において上昇する傾向があり、眠気とリラックスが増加する傾向を示唆したが、この傾向は、狭帯域光でより顕著であった。以上より、狭帯域光で覚醒度が低下する傾向を示し、広帯域光に比べて眠気がより促進されることが本実験より示唆された。狭帯域光下で観察される覚醒度の低下は、メラノプシンを発現する網膜神経節細胞を活性化する広帯域光に特有の波長域に起因すると考えられる。光刺激は錐体細胞、桿体細胞、そして特にメラノプシンを発現する網膜神経節細胞に影響を与え、その感度は特徴的な青色光の波長490nmでピークに達する。その結果、この波長域を減衰させることで、メラノプシン発現網膜神経節細胞への影響が減少し、覚醒度が低下したと考えられる。しかし、HF含量の低下はすべての光条件において明らかであり、心理的緊張の低下も狭帯域光に対して広帯域光で観察された。これは、実験プロトコルが被験者の入眠を禁止し、それによって脈波のHFに反映される心理的緊張が高まる一方で、眠気が増してアルファ波が多く発生し、生理的心理的な眠気が誘発されたことに起因すると考えられる。以上の結果から、有彩色光周波数帯域制御が睡眠介入に及ぼし得る可能性を示唆した。
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