研究課題/領域番号 |
20K12743
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研究機関 | 北海道科学大学 |
研究代表者 |
山下 政司 北海道科学大学, 保健医療学部, 教授 (40210421)
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研究分担者 |
伊藤 佳卓 北海道科学大学, 工学部, 助教 (90849142)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 快感情 / 生理的指標 / 刺激モダリティ |
研究実績の概要 |
視聴覚刺激により動脈波成分を用いた快感情の生理的指標候補が見出されたが、それらが他の感覚モダリティでも有効かどうかは不明である。そこで、幾つかの感覚モダリティ刺激により喚起される快感情に伴う生体反応の特徴を調査するため、快感情を喚起する味覚・嗅覚・聴覚刺激を与えた場合の生体反応を計測し解析評価した。 研究は北海道科学大学倫理委員会の承認を得て実施した。書面で同意した21~23歳の健常男性15名の協力を得て実験を行った。快感情喚起の味覚刺激には「生チョコレート」を1粒摂取させること、嗅覚刺激はアロマオイル「オレンジスイート」を試香紙に滴下し、鼻下6cmに設置して嗅がせることとした。また、聴覚刺激としては、10名による事前調査で快感情スコアの最も高い楽曲「恋」をステレオで聴かせることとした。実験手順として、座位安静の被験者に対して前安静90秒の後、各刺激を90秒与え、後安静を40秒取った後、刺激中に喚起された感情につき質問紙に答えさせた。対照を含め、各刺激に対応したセッション中の生体反応を計測し、解析評価した。計測生理量は心電図、連続血圧、サーミスタ呼吸波、指尖光電脈波である。 各刺激に対する質問紙結果は、対照に対して全ての刺激で快スコアが高く有意であった。生体反応としては、収縮期・拡張期血圧、脈圧ともに音刺激だけが有意に高くなった。心拍率および呼吸波振幅では味刺激のみが有意に高かった。脈波に違いはなかった。動脈波成分を用いた生理パラメータを試したところ、対照刺激に対して全ての感覚刺激で有意に高くなり、快感情の生理的指標候補の応答が様々な感覚モダリティ刺激に対しても有効であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍が広がる中で緊急事態宣言を受け、大学構内への立ち入り禁止措置が取られた時期があるうえ、なるべくリモートワークに切り替える要請があった中で、遠隔授業用の資料作成や教育システムへの各種演習・実験・課題設定などに非常に多くの時間がかかった。さらに、感染対策を充実させるための用品確保に時間が必要であったことと、対面による生理実験を実施することが困難な状況が長かったことが理由である。
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今後の研究の推進方策 |
ラッセルの感情2次元モデルにおける感情価Valenceを反映する快感情の生理指標を求めたのと同様に、不快に対応する生理指標を明らかにするため、複数の不快刺激に共通して応答する生理的パラメータを探索する。その基礎データを取得するために様々な視聴覚刺激を用いた不快情動喚起時の自律神経活動・血液循環応答を反映する生理応答を計測し、各種解析を行う。 ラッセルのモデルによれば、不快といっても覚醒度の高い順に、恐怖、嫌悪、悲しみといった感情があり、その生理応答は覚醒度と対応しがちな自律神経活動によって異なる。しかし、快感情に共通する生理パラメータがあることで、感情価Valenceを反映する不快に対応する生理応答パラメータがありうると考えられ、得られた計測データからどのような生理的特徴量を考案すれば覚醒度の違いを包含した不快に共通して応答する生理指標が求まるかを考察する。その際、各種ゆらぎ情報を用いた解析や動脈波解析などの様々な解析方法を試みる。なお、生理実験の視聴覚刺激として、恐怖、嫌悪、悲しみ、対照動画を用いる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染のリスク増大を受け、十分な感染対策で調査・生理実験等を実施する必要上、快・不快感情を適切に喚起する刺激を選定するため、刺激の感情喚起力を把握する調査の調査対象数を縮小せざるを得なかったことが一つの理由である。また、快に応答する生理量PI の刺激モダリティへの適合性を実験的に検証する研究を行うための被験者数も縮小せざるを得なく、消耗品、謝金等の支出が減少したことが原因と考えられる。さらに、コロナ禍を受けた各種半導体の供給力低下に伴い、必要部品等の遅延も要因である。さらに、発表予定の各種学会の開催中止措置やオンライン開催に伴って、旅費交通費の支出が無かったことも原因である。また、論文掲載料未使用も原因である。 今年度は十分な感染対策を取ったうえで、対面による生理計測実験を行い、当初予定の被験者数に近づける努力をする。その中で、感染対策用物品の購入や生理実験用消耗品等の購入額も増加する。 今年度は対面/オンライン併用対応の学会が増えてくると予測されるので、積極的に発表して参加する。また、積極的に論文投稿して掲載費に充てる。
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