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2022 年度 実施状況報告書

感情生理モデルとAIによる保健医療向け感情理解システムの構築

研究課題

研究課題/領域番号 20K12743
研究機関北海道科学大学

研究代表者

山下 政司  北海道科学大学, 保健医療学部, 教授 (40210421)

研究分担者 伊藤 佳卓  北海道科学大学, 工学部, 講師 (90849142)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード快感情 / 段階別刺激強度 / 線形対応性 / 不快感情 / 生理的指標 / 刺激モダリティ
研究実績の概要

快-不快情動の生理指標を探索した結果、快の生理指標PI(Pleasure Index)について、動脈波パラメータに基づく有力な候補を複数見出した。これらのPI候補が様々な快感情喚起時の刺激強さに対応してその大きさが変化する線形対応性を持つのか検討を行った。調査にあたり、同様の感情を喚起しながら、その強さのみを3段階に変化させる(段階別)刺激を作成する必要がある。そこで実験者が用意した様々な動画視聴時の質問紙調査による事前調査を行って実験で使用する刺激を選定した。持続的に感情喚起をもたらしやすいスポーツ名場面を複数組み合わせた動画を作成し、事前調査を元に刺激動画を決定した後、生理実験を行った。質問紙結果としては、中間強度と最高強度との差が少なく、事前調査の質問紙回答と生理実験時の質問紙回答に乖離が見られた。これは、被験者が異なることによる要因以外に、被験者のスポーツへの興味が大きく影響することがわかり、刺激設定の難しさが認識された。生理パラメータの応答強度は段階的に上昇傾向を示すが、最低強度に対して最高強度で有意差が見られただけであった。さらに、質問紙回答結果と生理パラメータ強度両者の相関を確認したところ、有意な相関が見られ、相関係数rは0.53であった。
次に、様々な感覚モダリティ刺激により喚起される不快感情に伴う生理応答の特徴を調査するため、不快感情を喚起する嗅覚・聴覚・味覚刺激、比較用の快感情喚起動画刺激および対照刺激を与えた場合の生理応答を計測して比較した。感覚閾値の違いの個人差が大きいので刺激強度の設定が難しく、対照に対して有意な違いを示した刺激はわずかしかなかった。収縮期圧変動の呼吸性洞性不整脈成分では、対照に対して不快刺激で上昇し、快動画刺激で減少する傾向を示したものの、有意差はなかった。不快刺激に共通した生理応答を見出すことは簡単ではないことが示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

コロナ禍が長引く中で何度も緊急事態宣言を受け、大学構内への立ち入り制限・自粛措置が取られた時期があるうえ、遠隔授業用の資料作成や教育システムへの各種演習・実験・課題設定などに非常に多くの時間がかかった。また、感染対策をしっかりと実施しながらの対面による生理実験を実施することに時間がかかったことが理由である。さらに、研究目的の難易度が高いことがあげられる。実験は行えても目的の知見を獲得するには大きな壁があるので、時間がかかることが理由でもある。

今後の研究の推進方策

嫌悪・恐怖・悲しみなど覚醒度の異なる様々な不快を一つの生理応答で表すことは、従来の生理応答解析では非常に困難なことが判明したので、生理信号間の相互情報量やゆらぎ解析など、様々な視点から解析して生理指標となるような生理パラメータを求める。さらに今年度同様の生理実験を追加で行い、先行して求める不快を表す生理パラメータが異なる刺激モダリティにも対応するか検証する。また、快・不快のそれぞれで得られた知見を基に、AI解析を適用して個人差をある程度克服した感情識別ができるようにする。

次年度使用額が生じた理由

コロナ感染のリスク増大を受け、換気・風量調節・アルコール清拭など十分な感染対策したうえで、調査・生理実験等を実施する関係上、実験室の室温・湿度管理をしなければならず、実験室となるシールドルームの運用上一カ月に実施できる期間が限られ、生理実験の計測評価人数を減らさざるを得なかったことが一つの理由である。被験者数減少に伴い、消耗品、謝金等の支出が減少したことが原因と考えられる。さらに、コロナ禍を受けた各種半導体の供給力低下に伴い、必要部品等の遅延および品切れも要因である。発表予定の各種学会の開催中止措置やオンライン開催に伴って、旅費交通費の支出が減ったことも大きな原因である。また、論文リジェクトによる論文掲載料未使用も原因である。
今年度は十分な感染対策を取ったうえで、対面による生理計測実験を行い、当初予定の被験者数に近づける努力をする。その中で、感染対策用物品の購入や生理実験用消耗品等の購入額も増加する。また、今後は対面対応の学会が増えてくると予測されるので、積極的に発表して参加する。また、積極的に論文投稿して掲載費に充てる。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Pilot study on the biological responses to pleasant video stimuli in different intensities2022

    • 著者名/発表者名
      M. Yamashita, Y. Itoh
    • 雑誌名

      Proceedings of 9th international conference on Kansei Engineering and Emotion Research 2022

      巻: 1 ページ: 1, 7

  • [学会発表] 異なる強さの快喚起刺激と生体応答の一検討2022

    • 著者名/発表者名
      山下政司、伊藤佳卓
    • 学会等名
      第61回日本生体医工学会大会
  • [学会発表] Pilot study on the biological responses to pleasant video stimuli in different intensities2022

    • 著者名/発表者名
      M. Yamashita, Y. Itoh
    • 学会等名
      KEER2022
    • 国際学会
  • [学会発表] モニタリングのための心音計測に関する基礎的検討2022

    • 著者名/発表者名
      山下政司
    • 学会等名
      第60回日本人工臓器学会大会

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公開日: 2023-12-25  

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