研究実績の概要 |
母体内で上肢の発達が中途で停止して生まれる子どもは,現代にあっても一定数認められ,原因は解明されていない.したがって出生後に義手などで補完を目指すことになる.しかしながら,手の機能はなにかを持つためだけではなく,乳幼児にあっては,運動や触覚など発達自体に手が大きな役割を果たす.本研究では,生まれながらに手指がない子どものために,発達を目的とした人工の手指を開発するとともに,保護者の心理を考慮しながら子どもの発達に有用な情報を提供するメディアの設計を行うものである. 過去の研究で検討がなされたデザイン案をもとに愛和義肢製作所の協力のもと,色,指形状に重点をおいたシリコーン製人工の手指の試作を進めた. 代表者の小北は主にメディア設計を進めた.また,要する知見を収集し,行動変容に要する情報の分類とメディア種の考察を行った.分担者の大西は,先天性上肢欠損児の人工肢(以下,ABP)の装着が,欠損側のセルフタッチ(以下,ST)を補う効果があるとの仮説のもと,ABPによる口接触のSTを計測するセンサシステム構築と口接触のセンサ信号からの認識の基礎実験を実施した.口へのセルフタッチは指手腕の運動・姿勢感覚の発達に寄与することから,ABP内に静電容量式タッチセンサ,感圧センサ,赤外線温度センサをどの組合せで内蔵すると,①ABPと口の接触(ST) ,②ABPと口の接近(プレST),③接近なし,④ABPとタオルの接触(非ST接触)の4条件の再現率(各状態の時間に対するセンサ信号の正答時間の割合)が最大化されるかを成人男性の対象として調査した.結果,タッチセンサ,赤外線温度センサの組み合わせが全組み合わせの中で再現率が高いことを確認した.また,カメラ1台の画像に対し深層学習を用いた手の自動検出システムの堅牢性の評価実験を行った.カメラ配置の設定因子が検出のばらつきに及ぼす影響を調べ,最適化を図った.
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