研究課題
本研究では,転倒を引き起こすような強い外乱として刺激(以下,転倒刺激とする)を与えることで滑り転倒現象を再現し,その際の回避動作の解析結果に基づいた新たな転倒リスクの評価を目指している.特に本研究では,各個人で異なる身体機能が滑り転倒時の回避動作戦略に与える影響について,身体機能を制限した滑り転倒実験による解析とその実験結果に基づいて構築した滑り転倒回避動作モデルを用いた理論解析の両者を用いてアプローチし,個人ごとの回避動作戦略に最も寄与する身体機能を特定することで,回避動作戦略のメカニズムを明らかにし,それに基づく新たな転倒リスクの評価を目的としている.今年度は,前年度までに構築した滑り転倒刺激時の回避動作を表現した順動力学シミュレーションを用いて,転倒刺激に対して転倒が回避された姿勢(滑り足を踏み直した際の重心の位置や速度)の集合が,膝関節の可動域を制限された際にどのように変化するか,また,安定性がどの程度下がるか調査を行い,個人ごとの回避動作戦略に寄与する身体機能の特定や,回避動作戦略のメカニズムについて検討を行った.研究手法として,順動力学シミュレーションを実施し,膝関節の屈曲角度を制限した場合の安定領域を比較した.ここでの安定領域とは,転倒刺激に対して転倒が回避された姿勢(滑り足を踏み直した際の重心の位置や速度など)の集合を表している.シミュレーション結果から,膝関節の屈曲角度が制限されることにより,体幹を前傾させ,歩幅を拡大するような転倒回避動作戦略をとりやすいことが示唆された(これは,前年度に実施した実験的解析と同様な傾向を示している).また,制限する角度の大きさを段階的に変化させた場合,安定性は一定の傾きで減少するのではなく,ある角度範囲を基準に急激に減少することが確認された.
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日本ロボット学会誌レター
巻: Vo. 41, No. 10 ページ: pp. 897-900
10.7210/jrsj.41.897