研究課題/領域番号 |
20K12757
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
安倍 幸治 秋田県立大学, システム科学技術学部, 助教 (50315652)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 見守りシステム / 異常検知 / オートセグメンテーション |
研究実績の概要 |
本研究は,一人暮らしの高齢者の見守りを,音信号を用いた機械的な異常検知に基づいて行うことを目的とする. 本年度は,研究計画に記載した3部構成の一つ目である音信号のセグメンテーション部の構築・評価を行った.本研究で作成を目指す,異常検知システムは,監視環境の日常音を混合ガウスモデルで表現し,そのモデルからの乖離度をもとに異常を検知する.しかし,音信号は時間的に連続した信号であるため,その音を発生させた音源(音響イベント)ごとに適切に区分する必要がある.そこで,一つの音響イベントから発生する音響特徴量は安定した正規分布をなすと仮定し,その尤もらしさをベイズ情報量基準を用いて評価することで音信号の区分を実現した. 作成したセグメンテーションシステムの性能を評価するために,5つの監視対象となる環境を用意し,マイクロホンを用いて音信号を2時間程度収録した.収録した音信号をセグメンテーションシステムに入力した結果,0.1秒から3秒程度の長さを持つセグメントに分割を行うことができた.分割された個々の音響特徴の分布をコルモゴロフ-スミルノフ検定を用いて正規分布に従うかどうかを評価した結果,収録場所によらず,ほぼ全ての分割区間が正規性を有することが確認された. 続いて,作成したセグメンテーションシステムによって分割された音信号の短時間区間の音響特徴量ベクトルを用いて,20群からなる混合ガウス分布を推定した.得られた混合ガウス分布の平均及び共分散を比較した結果,収録場所ごとに異なる日常音モデルが生成されていることも確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の実施計画は大きく三つの構成により成り立っている.一つ目が音信号のセグメンテーション部,二つ目が音響特徴量に基づくステアリングベクトルの生成部,三つ目が音響イベント発生モデルの生成とそれを用いた異常判別部である. 研究実績の概要で書いた通り,セグメンテーション部の構築・評価は進んでいるが,主目的を達成するために必要となる,異常判別部の検討にあまり手がついていない.そのため,本研究課題の進捗状況は,想定よりもやや遅れていると言える.混合ガウス分布に基づく異常検知システムについては,ある程度作成・検討できているものの,深層学習に基づく,オートエンコーダやGAN等を利用した異常検知システムは作成に着手できていない.ベースとなるシステムを作成したのち,実験的検討に基づいた改良を予定しているため,急ぎベースシステムの構築を行う必要があると考える.
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今後の研究の推進方策 |
本年は,まず,検討のベースとなる混合ガウス分布に基づく異常検知システム,及び深層学習を利用した異常検知システムの構築を行う.構築においては,一旦リアルタイム性については保留し,異常検知のアルゴリズムとして所望の働きをするかどうかを検討することを優先する.評価サンプルについても,収録環境を増やし,システムの汎用性について検討する.また,既に一部検討を行った混合ガウス分布に基づく異常検知システムでの知見ではあるが,日常音と思われる音が異常音として判別される過剰検知の傾向が強かったため,出現頻度が低い日常音の扱いをどうするかを検討する必要があると考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナにより学会発表等に係る旅費が発生しなかったことで,その予算を異常検知システムの構築に使用するPC(開発用及びシステム設置用)の購入に充てた.また,結果として少額の端数が発生したため,次年度使用額が発生している. 全体から見れば少額ではあるが,本年度,研究目的に沿って物品費として適切に執行したい.
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