本研究では,第2-5指の形態は対象物体の特性により受動的に決まるものであり,主体的に制御すべきは母指と手関節と考える.このため,母指中手手根(CM)関節と撓骨手根関節とを一連体とした多自由度化機構とした義手手先具と手指装具のメカニズムと操作インタフェースの構築が作業能力の再現に寄与するとの仮説を立てた.母指と手関節の機能が中心の人工の手のデザインを提案し,手の把持・操り機能を代替・補填する道具としての義手・上肢装具の効果・効率・満足度向上を目的とする. 母指CM関節と撓骨手根関節を一連帯とする機構の手先具・ハンドのデザインを進め,ケーブル制御系と筋電制御系の操作インタフェースを構築した.電動義手ハンドとして空間リンク機構式の母指,母指のCM関節に回内外と屈伸・内外転の運動を付与し,他指に掌背屈運動を付与した5指ハンドを開発した.また,側面把持と3指把持が可能なケーブル制御式の3指手先具も開発し,手先具とハンドは3Dプリンタで試作体を作成し,5指ハンドと3指手先具の把持能力評価,SHAPの把持対象物に対する掴み持ち上げ能力評価の実験を行うとともに,改良設計を進めた.さらに,電動義手用にRT法を用いた自動調整式のパターン識別筋電制御系のインタフェースを構築した.外乱に対し堅牢性を有するよう実験により,用いる特徴量とその個数に対し最適化を図った.さらに,電極間距離が10mmの筋電センサ2つを前腕に装着してハンドの開閉の2自由度の速度制御を行う操作インタフェースとしての有用性を検証した.
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