研究課題/領域番号 |
20K12764
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
川中 普晴 三重大学, 工学研究科, 准教授 (30437115)
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研究分担者 |
鶴岡 信治 鈴鹿医療科学大学, 医用工学部, 教授 (30126982)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 認知症評価システム / 運動機能評価 / 手指運動 / 視線移動 |
研究実績の概要 |
日本では高齢者が急激に増加しており,認知症の予防と早期発見は重要な課題である.そのため現在,介護施設などではHDS-RやMMSEといった認知症の診断テストが実施されている.しかしながら,これらの診断テストは定期的に実施する必要があるため,被験者や評価者にとっては肉体的・精神的な負担となるといわれている. 一方,近年では高齢者の認知機能と手指の運動機能の関係に関する研究が進められており,手先の器用さと認知機能の間に高い関連があることや,楽器演奏や手工芸等を行う人の認知機能が高いことなどが知られている.このような先行研究の報告を踏まえ,本研究では,被験者の手指運動機能を測定し,その結果から認知症の進行度を診断するシステムのための研究開発を進めてきた. 2022年度については,コロナウィルス感染症の拡大もあったため,県内の介護福祉施設へ頻繁に訪問することが実現できなかった.そのため本年度については,これまで開発してきたパズルゲーム(タングラム)を活用した手指運動機能の測定システムに対して,視線移動をリアルタイムに計測する機能を追加実装した.また,昨年度から研究を進めてきた手指運動からの認知機能の評価法に加え,ゲーム中の被験者の視線移動情報を用いて空間認知能力を評価する仕組みについても検討し,提案手法をシステムに取り入れた. 作成したプロトタイプシステムについては,県内の介護施設職員の協力のもと,少数の施設利用者(被験者)による評価実験を実施し,開発しているシステムの介護現場での運用可能性について評価した.また,実験を通じてシステムの課題点の洗い出しや認知機能の評価方法に関する検討も進めた.実験結果をもとに認知機能評価エンジンやユーザビリティ部分などを改良し,現場での実運用のための準備を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は,昨年度から引き続きコロナウィルス感染症の拡大が収束しなかったため,研究協力先となっている県内の介護福祉施設へ訪問することができず,開発しているシステムに関する十分な評価実験を実施することができなかった.そのため,2022年度の研究については,これまで開発してきた手指運動機能の評価システムに関するブラッシュアップ(ユーザインタフェースの改良や内部処理のアップデート,バブフィックスなど)を継続して進めた.また,前述の内容に加えて昨年度から検討を続けてきたパズルゲーム中の高齢者の視線移動をリアルタイム計測する方法と,計測された視線移動情報から空間認知機能を評価するための特徴を抽出する方法をシステムに実装するのみとなってしまった. 作成したシステムについては,少数の大学生(大学院生を含む)による事前実験を実施し,動作確認などの基本的な事項について確認した.また,ユーザビリティや視線移動計測精度の妥当性について基礎的な検討を行った. 2022年度の後半にはコロナウィルス感染症の拡大も落ち着いてきたため,介護施設のスタッフの協力のもと,作成したシステムの実際の現場でのユーザビリティに関する評価試験を実施した.しかしながら評価試験は施設職員と一部の利用者のみによるものであり,十分な数の被験者による長期間にわたる検証実験ができていないのが現状である. 上記の状況を勘案し,現在までの進捗状況を「やや遅れている」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度については,コロナウィルス感染症の拡大状況も収束しつつあることから,介護施設への定期的な訪問し,より多くの施設利用者による長期的なシステム評価実験が実施できると考えている.今年度についても,引き続き評価方法に関する検討とシステムの改善,ならびに評価実験用のコンテンツについて検討を進めていく予定である.特に,前年度に実装した視線の動きを計測し空間認知を評価する部分を拡張したので,その部分の有用性について評価実験を進めていければと考えている. 介護施設における評価実験については,上述の内容に加えて歩行の評価といった他の運動機能に関する評価システムに関する要望もある.そのため,上述のシステムに関する評価試験を進めながら,高齢者の健康増進ならびにQOLの向上のための仕組みづくりについても進めていきたいと考えており,現在その準備を進めている状況である. さらに,新型コロナウイルスの影響により,再び対面での実験実施が困難となってしまった場合における対策として,リモート環境を活用した認知症の進行度を評価できるような仕組みついても研究開発を進めるとともに,システムに実装していきたいと考えている. さらに,新型コロナウイルスの影響により,再び対面での実験実施が困難となってしまった場合における対策として,リモート環境を活用した認知症の進行度を評価できるような仕組みついても研究開発を進めるとともに,システムに実装していきたいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
理由: 2022年度については,2021年度に引き続きコロナウィルス感染症の拡大に伴い共同研究先である県内の介護福祉施設に定期的に訪問することができなかった.また,国際会議などについても対面形式からリモート形式に変更となった.国際共同研究先であるCardiff大学へ訪問と研究打合せ等についても,すべて中止となったため,当初想定していた出張費と人件費・謝金が次年度使用額として残ったものである. 使用計画: システム開発に係る消耗品,現地調査および成果発表に使用する予定である.
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