複数センサを用いた摂食・嚥下時の運動量測定に関する研究

2021 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 20K12766
• 研究機関: 徳島大学
• 研究代表者: 芥川 正武 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 講師 (90294727)
• 研究期間 (年度): 2020-04-01 – 2023-03-31
• キーワード: 嚥下 / 筋電 / 生体運動計測 / 慣性センサ

研究実績の概要

本研究課題の目的は摂食・嚥下に関する運動量を定量化する手法を提案することである。健全な摂食・嚥下運動は健康寿命の維持に欠かせない基本的な運動の一部であるが，加齢とともにオーラルフレイル（口腔機能の低下，虚弱）が進行し，全身機能の低下のきっかけとなり，健康寿命の短縮につながる可能性がある。この予防やリハビリテーションのためには摂食・嚥下の運動量を簡便かつ客観的に評価することが重要である。本研究課題では筋電，皮膚運動といったさまざまな状態を非侵襲的に測定・解析した上で，評価に有用な少数の測定項目を選別し，効果的かつ簡便な運動評価法を提案することをめざす。
初年度は2個の慣性センサモジュールと小型磁石を用いた喉頭隆起の運動測定に関する検討を行った。慣性センサモジュールのうち磁気センサを用いて一定条件下で対象部位の3次元的な動きを測定できることを計算機シミュレーションおよび実測により検証した。その結果，嚥下に関する運動を数値化することは確認できた。
令和3年度では他チャネル生体信号測定装置により，嚥下時の筋電の測定を行った。嚥下機能のスクリーニング検査に使われている空嚥下，水飲みテストなどと同様の嚥下運動を4ヶ所の皮膚表面筋電図を測定すると同時に嚥下音を咽喉マイクで収録した。その結果，嚥下5期モデルのうち準備期・口腔期・咽頭期の筋電図を測定することができた。
今後はこれらの筋電図と慣性センサとの同時測定を行う予定である。

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

嚥下運動時の筋電図の測定方法の確立に時間を要した。筋電図測定の生体信号収録装置の基本的な条件設定及び電極の取り付け方法について，試行錯誤に時間がかかった。感染症予防に関連して実験回数を抑制したことも影響した。さらに慣性センサと筋電図の同時測定の実施も計画していたが，センサと電極が物理的に干渉することが判明し，これらの取り付け位置と測定される筋電図の信号源となる筋群との関係について検討する必要がある。

今後の研究の推進方策

嚥下時の喉頭隆起周辺の皮膚の動き，嚥下関連筋群による筋電図，嚥下音の同時測定と各測定値間の関連性の解析を目指した研究であり，これまで皮膚の動きと嚥下音，筋電図と嚥下音の組み合わせでの測定はできている。今後，これら全ての同時測定を可能とするために，センサおよび電極等の取り付け位置について検討する。また複数の時系列信号と嚥下運動との関連性を明らかにするために，信号処理の手法を導入し解析を行う。特に筋電図は皮膚表面で測定するため複数の筋に由来する筋電信号が重畳したものであるため，独立成分分析をはじめとするいくつかの手法を適用することを試みる。

次年度使用額が生じた理由

実験回数が計画よりも少なかったため実験に関連した消耗品を購入が少なかったため物品費に余剰が発生した。また開催される学会等がリモートとなり旅費が発生しなかった。
次年度に繰り越した測定実験を実施するための消耗品の購入および咽喉マイクによる嚥下音収録の高音質化のための機器の導入，情報収集および成果発表のための学会参加に次年度の経費（物品費，旅費）と合わせて使用する予定である。