研究課題
2021年度は、水分摂取時の影響を考慮した排尿間隔、膀胱内蓄尿量の予測手法について検討した。検討した手法は、モデルをベースとした蓄尿量予測手法であり、モデルとして新たにウロダイナミクスに基づく非線形蓄尿量変動モデルの構築について検討した。これまでは、腎臓において血漿が糸球体で濾過され、原尿としてボーマン嚢に送られた後、尿細管、集合管、腎盂を経て膀胱内に流入し蓄積される過程を線形微分方程式のモデルとして適用してきた。今回検討したモデルは、より高精度な予測を目的として下部尿路の主な2つの機能である蓄尿・排尿のメカニズムを主に担う膀胱壁に着目し非線形モデルを構築した。膀胱に尿が蓄積する過程では、膀胱内に尿が蓄積し始め、尿で満たされていくと、膀胱壁が伸張し、膀胱の容積が増加する。膀胱壁が限界まで伸張し、蓄積している尿量が膀胱の最大容量に近づくと、排尿が行われる。本モデルでは、このメカニズムをモデル化することで4つのパラメータを含む非線形の蓄尿量変動モデルを構築した。これら4つのパラメータを推定することで膀胱内蓄尿量の推移を予測する。排尿直後の初期予測におけるパラメータの初期値は、排尿時における尿をハイパースペクトルカメラを用いて求めた吸光スペクトルから推定する。さらに初期予測後の水分摂取にともなうパラメータの変動を補正するため体内情報を計測できるデバイス(超音波センサ、口腔水分計、スマートウォッチ)を用いて、初期予測を補正することで接種水分量を考慮し予測精度を向上させる手法について検討した。また、簡易的に排尿時の吸光スペクトルを推定する手法として、RGB画像からハイパースペクトル画像(高次元画像)を推定する手法の検討についても行った。
3: やや遅れている
本研究では、検証実験において接種水分量、接種タイミング等のさまざまな条件下で実施する必要がある。2021年度は検証実験において被験者へのコロナ感染対策のため機器の消毒、複数の被験者の同時計測を行わない等の配慮を徹底し行った。そのため、比較的少人数の被験者にたいし実験条件を絞っての検証実験となったため、検証に必要な実験条件が不十分であった。
感染対策を徹底しつつ、主要な実験条件を優先して実験を実施する。その結果をもとに、実験条件、実験システムの見直しを行う。また、実験結果をモデル構築にフィードバックすることで、予測精度の向上に取り組む。
2021年度は、2020年度に比べて検証実験数は行えたものの、当初予定していた規模での実験は行うことはできなかった。そのため、実験を行うのに必要な予算の使用を見合わせた。2022年度は、2021年度に行えなかった実験条件を踏まえた実験を行う予定のため、次年度使用額が生じた。
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SICE Journal of Control, Measurement, and System Integration
巻: vol. 15 ページ: pp. 86-95
10.1080/18824889.2022.2048532