研究課題/領域番号 |
20K12771
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研究機関 | 神奈川工科大学 |
研究代表者 |
大瀧 保明 神奈川工科大学, 健康医療科学部, 准教授 (50344693)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 穿刺 / 慣性センサ / 医療 / 姿勢 / 把持 / 操作 |
研究実績の概要 |
透析穿刺における穿刺針の運動と姿勢、把持の特性に基づく穿刺技能の特徴化について、穿刺針に搭載するセンサによる方法を提案し、その適用を検討した。ボタンホール穿刺を模擬した課題においては、昨年度に引き続き力センサの搭載を検討した。穿刺の進行および穿刺対象との相対姿勢、穿刺針に作用する力との関係を調べることとし、針に搭載する慣性センサと3軸力センサのみで評価できるよう構成した。検証用に光学式モーションキャプチャも併用した。ボタンホール穿刺は同一点から予め形成した穿刺ルートに沿って同一角度で穿刺するものである。本年はボタンホールの形成段階に着目した。一定期間をかけた複数回穿刺によるボタンホール形成のプロセスにおいて、刺入時の抵抗感の変化が判断目安とされることについて、本法による穿刺抵抗の定量化を検討した。基礎的検討として市販の皮膚血管モデルにグリセリン等により潤滑条件を変えた実験条件を用意し、穿刺針に加わる3分力から抵抗感の定量化が行えることを確認した。一方、穿刺針の刺入角度等、針の操作に見られる熟練者の手技の特徴化については継続して進め、被験者を加えて分析を行った。熟練の臨床工学技士においても個々人で穿刺の方法に差異はあるものの、共通する特徴が見いだせた。それは目標とする留置から逆算した穿刺プロセスの一貫性、事前観察による予見の重要性を示すものであった。成果の一部は学会発表した。本件の研究計画には含めないが、本件の成果より生じた新しい展開として、超音波エコー診断装置とセンサ搭載穿刺針の併用、情報統合が期待され、今後に別途研究を進めることとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
力センサの穿刺針への搭載は依然、穿刺針を実験用に改変したものとなり、穿刺針本体に変更を加えずに搭載する方法については提案に至らなかった。3軸力センサの計測結果において問題となったモーメントの考慮について、3軸トルクを加えて検討可能な小型6軸力覚センサを購入して利用を試みたが、穿刺針への実装がうまくいかず開発上の課題を残した。要求事項を明確化したうえで、センサ搭載場所の検討を含め、目標とする仕様の検討を進める必要がある。針の温湿度から穿刺段階の情報を得る方法も基本的な原理の確認にとどまり、実験に至っていない。当初に計画した、対向する手指による把持を想定したセンサ配置は、個々人の選択や違和感に配慮しながら見直していくこととした。データに基づき可視化された巧緻性に関する知見の教育活用については議論には至らなかった。新型コロナウイルス感染症の状況も踏まえ学外での活動は控えた。以上の認識から現行の進捗程度を判断し、課題実施期間の延長を申請したものである。
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今後の研究の推進方策 |
穿刺針にそのまま搭載、脱着可能な方式での姿勢と力の計測方法について、研究開発を完了し妥当性の検証を行う。温度、湿度、照度などの計測項目から血管内腔への到達など穿刺の主要時点を検知する方法について穿刺針に実装して検討する。穿刺針に搭載する計測システムとしての統合化を図る。昨年度は穿刺対象部位と穿刺針の関係性を記録可能とする必要性において、慣性センサを内蔵する深度センサ(カメラ)と併用という着想について取り組むとしていたが、進捗状況に鑑みて凍結し、本件の研究には追加しないこととする。また、穿刺針のタイプにセンサを搭載する穿刺針の臨床での活用について医療従事者の助言も得て議論する。データにより可視化された巧緻性に関する知見の教育活用を検討する。予算は開発に必要な電子部品等の購入に充てるものであり、購入計画に大きな変更はない。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会参加がオンラインとなり、予定した旅費を使用しなかったため。進捗状況にともない、電子部品およびセンサの購入を持ち越したため。使用計画に変更はない。
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