透析穿刺において、穿刺針が刺入される際の手技の巧みさを、穿刺針の動きと力に見る特徴により定量化することが目的であった。穿刺針に搭載可能なセンサによる計測方法を提案し、模擬皮膚血管モデルに対する実験室実験にて評価を実施した。被験者は未習熟者については知識を有するが実務経験のない者、習熟者については透析治療および血液浄化業務で臨床経験を有する熟練の臨床工学技士であった。実験課題はa) 針の刺入とカニューラ留置の課題、b) ボタンホール穿刺を模擬した課題の2種を考慮し、1)透析穿刺における針の姿勢・角度、タイミング、2)操作において針に加える力・針に加わる力の観点から、習熟者と未習熟者の比較における技能差の顕在化にて本法の有効性を示した。 令和5年度は穿刺針に生ずる力の特性に関し、穿刺針に力覚センサを設置する方式に加え、手指に感圧センサを貼付する方式で評価を試みた。前者は把持をセンサ位置に制約する前提であるが、穿刺針の保持の仕方、刺入時や針を進める際の把持力の調整に技能の要所を見いだすことができた。後者は穿刺針の把持位置を制約しない別案であったが、安定した計測に至らなかった。また、皮膚や血管への貫入時点の検出について、温湿度センサを穿刺針に装着して評価する方法を検討した。温水を環流した模擬皮膚血管モデルでの試行においては現時点で明確な応答の検出に至らなかった。引き続き技術的可能性を探っていきたい。この他、穿刺針の運動力学情報が得られる本法の展開としては、エコーガイド下穿刺における超音波診断装置との併用を提案し、ナビゲーション支援技術としての活用を示した。また、刺入時点の検出や刺入深さを評価する目的に対して、本法にレーザ測距センサを穿刺針に追加して検出する方法を提案した。成果は学会にて講演発表した。
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