研究課題/領域番号 |
20K12790
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
松浦 和也 東洋大学, 文学部, 准教授 (30633466)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アリストテレス / プラトン / 質料形相論 / ある / 一と多 / 言語 |
研究実績の概要 |
2020年度は新型コロナウイルス感染拡大防止対策のため、研究会や遠隔への資料収集といった移動や、海外文献の一部の調達などの研究活動は制限されたが、ギリシア語文献の翻訳や注釈の作成や、比較的入手が容易であった先行研究の調査に従事することで、研究活動を進行させることができた。この作業を通じて、当初の想定通り、アリストテレスの自然哲学は後期プラトンの形而上学的議論を下敷きにしていることの確信を得られた。アリストテレスは生成消滅とそれ以外のタイプの変化を区分するが、この区分はそれぞれのタイプに対応する変化が自然界に実在するという理由によるのではなく、むしろ「主語と述語」で構成される言語使用と、主語のタイプ分類を基盤とする彼の言語分析に依拠している。そして、その言語分析には、プラトン『パルメニデス』が主として展開した「一と多」をどのように扱うかというデリケートな存在論的議論からの援用が見られる。また、この見方を哲学史的経緯から捉えなおすと、アリストテレスの質料形相論はエレア派の「ある」(to on)の一義性との対決から構想されたものであるが、この対決姿勢は質料形相論に限られるものではなく、たとえ名指しはされていなくても、彼の自然哲学に相当に広い範囲で維持されていることになる。以上のことは、対比的に、後期プラトンの諸言説がアリストテレスの哲学体系に与えた、単純な弁証法的展開ではなく、内在的な積極的役割を果たしていたことを示しうるだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資料収集や学術成果の公開といった点では乏しいものの、成果に繋がる基礎作業に従事できた。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍は継続すると予測するが、物理的移動を伴う調査や研究会での成果公表は控えなければならないが、テレワークでも可能な資料収集とその検証は継続し、研究計画通りに基礎的な研究活動を遂行していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症対策のため、旅費を支出すべき機会がなく、また流通の一部の混乱によって海外文献の調達が制限されたため、余剰が発生した。同じ状況が続く場合、代替となるオンラインサービスへのサブスクリプションなどに支出を充てるつもりである。
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