研究課題/領域番号 |
20K12790
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
松浦 和也 東洋大学, 文学部, 教授 (30633466)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 哲学 / プラトン / アリストテレス / 科学史 / 変化 / 空間 / 技術 |
研究実績の概要 |
アリストテレスの自然哲学的著作とプラトンの後期著作の関係を整理する中で、本年度はパルメニデスやゼノンといったエレア派的な形而上学的思索を両者がどの程度の強さで受け入れているのかを調査した。その過程で、稀代のアリストテレス解釈に、テミスティオスやシンプリキオスといった古代の注釈が根強い影を落としている事例を数点発見した。この発見は、本研究の問いの核心部分に抵触し、プラトンとアリストテレスの接続関係が少なくとも自然哲学という領域においては当初想定されていたほどには連続的ではないかもしれないという示唆をもたらした。この発見の一部は次年度に公開する準備を進めている。 他方で、プラトンとアリストテレスとの接続関係を再考するための一助として「技術」(テクネー)を取り上げ、近年の技術論や技術倫理で扱われる技術観と対比しながら、その特色と哲学的位置づけを考察した。技術をどのように把握するかという点においては両者の間に一般的説明の重視といった類似性が見られ、さらにこの類似性が自然哲学およびフィロソフィアの理解にも及んでいることが確認できた。この考察の成果の一部はすでに論文として公開した。 ただし、この技術把握はどこまでプラトンとアリストテレスに独自で固有のものなのか、それとも古典期ギリシアにある程度流布したもので、プラトンとアリストテレスはその把握を言語化したものなのか、という問いが生じることになった。そのため、当初の研究計画では予定されていなかったが、ソクラテスを取り上げ、彼をはじめとした哲学者を当時のアテナイ市民がどのように見なしていたかを文献学的に調査した。その一部は講演として公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の遂行は当初とはやや異なる筋道となっているものの、本研究遂行のための基盤となる発見や検証すべき新たな課題が明るみに出た。それゆえ、研究活動としては順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
主に本研究課題による成果の公表に向けた活動を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響が残っているため、当初計画した旅費に余剰が生じたのみならず、一部の資料が未だ入手困難のため、年度内の調達ができなかった。次年度はこれらの資料の入手を中心に経費を執行していく予定である。
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