研究課題/領域番号 |
20K12791
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
君嶋 泰明 法政大学, 文学部, 准教授 (70846617)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 技術 / ハイデガー / ボルグマン / フィーンバーグ / 自然 |
研究実績の概要 |
当初の計画における本年度の目標は、技術分析論陣営のサーベイにあったが、コロナ禍の対応による前年度の遅れを取り戻すため、技術批判論陣営のサーベイも並行して行うことになった。その結果、以下のような成果を得た。 技術批判論陣営のサーベイを行う中で、アルバート・ボルグマンとその批判者であるアンドリュー・フィーンバーグが、本研究にとって詳しく取り上げるに値する論者として浮上した。彼らは、本研究が軸足を置いているハイデガー技術論を踏まえつつ、テクノロジーをめぐる現状は必ずしも望ましいものではない、という評価のもと、各々の技術改革論を戦わせている。ボルグマンは、暖炉に薪をくべるために森に木を切りに行くような、自然と四つに組んだ生活をある種の理想としつつ、それに単純に立ち返るのではなく、技術の恩恵はこれまで通り享受しつつ、各自が自然と四つに組んだ生活に準ずる活動(たとえばランニングのような)を確保すべしと主張している。これにたいしてフィーンバーグは、技術そのものは人間にとって望ましい生活に寄与しない、というボルグマンの議論の前提に異を唱え、技術が望ましい仕方で活用されていく可能性に注意を促している。 これにたいして、本研究ではハイデガーの技術論を再検討し、彼の特異な立場を浮き彫りにした。ボルグマンの技術改革論は、ハイデガー技術論解釈の一つの典型である(それゆえフィーンバーグの批判はハイデガーをも標的としている)。しかし、それは実際にはハイデガーの意に沿ったものではない。彼はむしろ、テクノロジーの現状を、自然それ自身が人間にたいして投げかけるある種の要求の帰結として理解しようとしている、その意味で、彼の企図しているのはそのようなものとして現状を理解する、技術の存在論なのである。それゆえハイデガーの見解は、技術批判論と分析論の議論を統合するという本研究の目標達成のための枠組みとなりうる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度から続くコロナ禍の対応に追われ、また新年度から学科での主任の業務も始まることもあり、十分に研究の時間を確保することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の成果を踏まえ、今年度は、自然から人間へのある種の要求への応答として技術の現状を理解するという視座が得られた。本年度はこのハイデガー技術論解釈を固めるとともに、ここに技術分析論の成果を組み込んでいく作業を始めていく。
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