現代人類学における存在論的転回については、すでにさまざまな議論が行われ、検証が続けられているが、本研究は、領域横断的な思想史的観点からこの問題にアプローチし、モーリス・メルロ=ポンティとクロード・レヴィ=ストロースにおける「野生」の概念を再検討する作業を通じて、この動向の哲学的意義と実践的射程を明らかにした。特に両者が提示している構造概念の含意を掘り下げ、その今日的な意義を探ることによって、新型ウイルスのパンデミックに直面している現下の状況の中で、人間性についての理解を深め、人間諸科学がもたらす諸成果を踏まえつつ思考する道を具体的に示した。
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