研究課題/領域番号 |
20K12809
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
佐藤 晃 早稲田大学, 文学学術院, その他(招聘研究員) (60734754)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | インド仏教 / チベット仏教 / 後期中観派 / 止観論 / カマラシーラ / ヴィマラミトラ / ジュニャーナキールティ |
研究実績の概要 |
本研究は、『修習次第』を中心に確認される後期中観派のカマラシーラ(8世紀後半)の止観論を起点に、チベット仏教前伝期における受容と展開の分析を行うものである。特にヴィマラミトラ(8世紀後半)著Rim gyis 'jug pa'i bsgom don(以下Rim gyis)とジュニャーナキールティ(9世紀頃)著*PAramitAyAnabhAvanAkramopadeza(以下PYBhKrU)を取り上げて、比較検討を行っている。 本年度は、まずRim Gyisの(1)序論、(2)止観が解脱道だとする主題を提示する箇所、(3)菩提心(世俗菩提心と勝義菩提心)定義の箇所のテキスト校訂と試訳及び解読を進めた。先行研究で指摘されるが、本書は主に『修習次第』中篇に依拠している。上記箇所でも確認される。その上で解読を進めた結果、Rim Gyisは『修習次第』中篇の議論だけでは説明不足だと判断したであろう場合に『修習次第』初篇等も参照しつつ議論を構成している点が確認できた。また議論の間で引用する経典や論書もカマラシーラの『修習次第』と全く同じではない点も確認された。これらは著者ヴィマラミトラ自身の思想を検討する契機となるであろう。次年度は上記の点を踏まえた検討を進める予定である。 そして、既に研究を行ってきていたPYBhKrUとの比較を行った。PYBhKrUは『修習次第』初篇からの影響の強い論書であり、Rim Gyisとは異なる特徴を持つ。特に菩提心を巡る議論では、PYBhKrUはそれを誓願心と発趣心という二種とする枠組みで解説するのに対し、Rim Gyisは世俗菩提心と勝義菩提心という枠組みで解説する。それは、それぞれの著者が影響を受けたカマラシーラの論書がそれぞれ異なる枠組みで論じていることによる。こうした相違を踏まえ、以降の止観論を含む修行論全体の展開の検討も次年度以降の課題となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、(1)ヴィマラミトラ著Rim gyis 'jug pa'i bsgom don(Rim Gyis)のテキスト校訂と試訳という基礎的作業を中心に進め、解読研究を進めてきた。また、(2)Rim Gyisとジュニャーナキールティ著*PAramitAyAnabhAvanAkramopadezaとの比較検討を行った。しかしながら、新型コロナウィルス蔓延等の諸事情により、予定していた資料調査や学会参加等を見送らざるを得なかったこともあった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、まず(1)ヴィマラミトラ著Rim gyis 'jug pa'i bsgom don(Rim Gyis)のテキスト校訂と試訳の精度を上げ、学術誌上で順次刊行する予定である。また、(2)Rim Gyis独自の思想分析に関して、影響を受けたカマラシーラの論書群及びジュニャーナキールティ著PYBhKrUを中心に、同時代の周辺論書との比較検討を進め、特に、止観の基礎理論となる推理論及び知覚論の分析、菩提心論等の諸議論の検討を行う。そして、(3)先行研究でRim Gyisと対になっていると指摘される、同じヴィマラミトラ著と伝えられるCig car 'jug pa rnam par mi rtog pa'i bsgom donとの比較検討も進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス蔓延等の諸事情により、当初予定していた学会や研究会参加及び調査に関わる旅費等の支出が無かったため、次年度使用額が生じた。次年度は、学会等への参加及び海外研究機関等への調査が可能な場合、それらに関わる旅費として支出したいと考えている。
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