研究課題/領域番号 |
20K12813
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研究機関 | 高崎経済大学 |
研究代表者 |
鈴木 耕太郎 高崎経済大学, 地域政策学部, 准教授 (90824863)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 牛頭天王 / 祇園社 / 行疫神 / 除疫神 / 『牛頭天王暦神辯』 / 陰陽道 / 『簠簋内伝』 / 寺社縁起 |
研究実績の概要 |
本研究3年目にあたる2022年度はこれまでの研究成果を発表や論文などのかたちでまとめることに注力した、具体的には以下の通りである。 【学会・研究会報告】1:「『ホキ内伝』諸本比較から考える――巻一を中心に―― 」(第13回陰陽道史研究の会・ZOOMを用いての報告・2022年4月3日)。2:「中世神話としての牛頭天王縁起――読解から「顕われる」儀礼―― 」(日本宗教民俗学会 第31回大会シンポジウム[パネリスト]・ZOOMを用いての報告・2022年6月11日)。 【論文】1:「利益と災厄から考える牛頭天王信仰――同体関係の検討を中心に―― 」『仏教文学』47号、2022年4月[単著・招待有]。2:「『ホキ内伝』と祇園社――その関係性と影響について――」『アジア遊学』278号、2022年12月[単著・招待有]。3:「『牛頭天王暦神辯』における吉備真備批判の意味――篤胤と近世祇園社との共振――」山下久夫・斎藤英喜編『平田篤胤――狂信から共振へ』、法藏館、2023年2月[単著・招待有]。 【その他】「『牛頭天王宮縁起』が示す近世・牛頭天王信仰」『武尊通信』172号、2022年12月[単著・短報扱い]。 また、2022年4月に牛頭天王信仰の研究を深化させるため「牛頭天王信仰研究会」を立ち上げた。現在は国文学・歴史学・民俗学・考古学といった領域を専門とするメンバー6名で月に1・2度のペースで活動している。2022年度は12月に研究会メンバーで分担して奈良県下の牛頭天王信仰についての総合調査を行なった。その結果、文書調査・民俗調査それぞれにおいて顕著な成果が得られたため、現在、その成果を共著論文としてまとめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の主たる目的のなかでも、研究計画上、最重要視したのが、各地に残存している――しかし、未だ研究史上、位置づけられていない、あるいは未調査の――テキストや史料の調査であった。たとえば、2022年度は奈良県下において未調査かつ研究史上、非常に重要と思われるテキストを発見したことは本研究の目的を満たすものであった(主催している牛頭天王研究会の調査成果)。しかし、本研究を立ち上げた当初目的から考えると、想定よりも成果が得られていないのが現状である。その理由としては、やはり新型コロナウイルス感染症蔓延があげられる。2022年度の調査も含め、これまで新型コロナウイルス感染症蔓延に伴う警戒レベルに応じて調査の予定を組まねばならず、当初想定していた調査候補先を全然回れていないのが現状である。 そのため、すでに翻刻されているものの研究史上、いまだ位置づけが曖昧なテキストや史料を用いた研究に切り替える必要性に迫られてきた。もちろん、そうした研究の方向性の切り替えにより、2022年度は3本の論文の刊行、2回の研究会・学会報告を行うことができたたため、本研究そのものの社会的意義は一定はたしているものと自負している。しかし、当初の計画では行う予定であった中国・四国地方や東北地方における牛頭天王信仰に関するテキスト・史料類の文献調査まで手を付けられず、結果としてその地域における牛頭天王信仰の研究は空白のままとなっている。 もちろん個人の力量不足の面もあろうが、上記のように主には社会状況により計画通りの研究が遂行できなかったため、現状ではやや遅れているといわざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
本研究最後の年度となる2023年は5月に新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行されたことで、これまでよりも文献史料などの調査を行なうことが容易になった。そのため、すでに2022年度の調査(主催している牛頭天王信仰研究会でおこなった調査)で成果を得ている奈良県下において、不足している部分の追加調査を行なう予定である。すでに2022年度の調査にて所在がはっきりしたテキストについては、上記研究会において翻刻作業を進めており、追加調査の結果を待って研究会名義での共著論文を執筆する予定にある。これまでの牛頭天王信仰研究において見過ごされてきた新たな一面が切り拓かれるものになると自負している。 一方で、最終年度であるがゆえに、新規調査を行ない、なおかつ年度内にその研究成果を出す余裕がない。この点についてはまた新たに研究計画を立てざるを得ないが、すでに新型コロナウイルス感染症の蔓延時に研究計画を一部変更して、翻刻等はされているももの、研究史上、位置づけられてこなかったテキストについての研究に切り替えていたこともあり、そうしたテキストや史料を用いた研究の成果として、単著論文を最低でも2本は執筆する予定にある。
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次年度使用額が生じた理由 |
繰り返しになるが、本研究の主たる目的各地に残存している――しかし、未だ研究史上、位置づけられていない、あるいは未調査の――テキストや史料の掘り起こし(翻刻等の史料紹介およびそれを用いた論文等の刊行)にあった。しかし、2022年度までは新型コロナウイルス感染症の蔓延により、警戒度などを気にしながら調査予定を組まざるを得ず、当初計画していたような全国各地における文献調査あるいは民俗調査を実施することが極めて難しい状況にあった。旅費の支出規模が計画よりも著しく小さいのはそうした社会状況に左右されてしまったせいでもある。またこれまで謝金が発生していないのは(先方から固辞されたということもあるが)当初予定していたほど、多くの調査先に行けていないからに他ならない。 すでに研究計画の方針を一部変更し、すでに紹介などはされているものの、研究史上では十分に位置づけられてこなかったテキストや史料を用いた研究を進めており、本研究の最終年度である2023年度はそうした研究の成果を発表したいと考えている。そのため、旅費支出が抑えられてきた代わりに、先行研究や史料紹介が行われている書籍などを購入し研究の充実に努めたい。
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