宗教に対する理解は異文化理解の重要な一部分を占めるにもかかわらず、社会問題化したいわば宗教現象の負の側面をめぐる情報がマスメディアでは強調され、価値中立的な宗教理解の機会は十分に提供されていない。更に宗教の定義問題を系譜学的アプローチが更新した後の宗教研究の今日的立場もまた、異文化理解や多様な宗教伝統の理解を必要とする読書人や職業人に十分に還元されていない。本研究のこれまでの成果は主に学術的著作を通じて公刊されているものの、同時代の宗教者及び宗教伝統の蓄積した知恵を宗教研究者が同時代人へと伝達する役割の一端を、本研究は果たし得たと判断できる。
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