研究課題/領域番号 |
20K12819
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
古荘 匡義 龍谷大学, 社会学部, 講師 (40710447)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 綱島梁川 / 宗教哲学 / 宗教学 / 実践 / 『回覧集』 |
研究実績の概要 |
本研究では、宗教体験の言説化について、宗教体験と伝統という二つの対立軸で論じる諸研究に対し、諸宗教への帰属意識という第三項も分析に含み入れる重要性を示す。そのために、近代日本の宗教思想家、綱島梁川と彼を慕う人々の宗教への帰属意識をカトリーヌ・コルニールの「複合宗教帰属」という概念で分析し、彼らの根ざしている宗教伝統や宗教への帰属意識の多様性こそが、超歴史的で普遍的な宗教体験や思想の「伝道」という営為を生み出し、宗教体験に根ざした社会実践を志向させていることを示す。本研究では、綱島を慕う者たちの回覧ノートである『回覧集』を主要なテキストとして分析するとともに、綱島を慕う人々の集会である「梁川会」の全容解明のため、各地の梁川会に関する資料を現地で調査する。これらの実証的な研究から神秘主義概念の再検討という宗教学の課題の解決を目指す。 2021年度は、当初2022年度に予定していた単著『綱島梁川の宗教哲学と実践』の刊行を2022年3月に実現できた。これまでの研究成果をまとまった形で公表することができた。新型コロナウイルスの感染が広がるなかで、各地での現地調査を行うことは引き続き難しかったが、岡山県高梁市の高梁市歴史美術館に所蔵されている綱島梁川関係の資料を調査することができた。この調査の成果は単著でも公表することができた。2021年度は単著1点、査読なし論文1点(もう1点2022年度に刊行予定)、査読なし論文1点、パネルでの提題1件として研究成果を公表できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、2022年度にこれまでの研究成果をまとめて、単著を出版する計画であったが、2021年度末に単著『綱島梁川の宗教哲学と実践』を刊行することができた。 しかし、『回覧集』の翻刻および出版に向けた助成申請などは準備が遅れており、2022年度中に準備を行い、2023年度以降の出版を検討することになる見込みである。 とはいえ、綱島梁川を中心とした宗教学・宗教哲学の研究が進められたので、総じて研究は順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に岡山県高梁市の高梁市歴史美術館に所蔵されている綱島梁川資料を調査したが、まだまだ未調査の資料も多く残されている。2022年度も高梁市に伺って、資料の調査を行いたい。また、2022年度は、新型コロナウイルスの感染状況が少し収まった時期を狙って、綱島との縁のある早稲田大学などの資料も調査していき、『回覧集』の翻刻と注釈作成作業を進めて、図書出版助成に応募する予定である。 また、理論的な研究としては、特に宗教体験論や神秘主義研究に対して、ウィトゲンシュタインの私的言語批判や言語ゲーム論などの観点から考察を進めていく所存である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画に基づいて研究費を使用していたが、若干の残額が生じた。残額は少額のため、当初の研究計画の通りで研究費を執行できる。
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