研究課題/領域番号 |
20K12820
|
研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
菊川 一道 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (10828205)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 近世仏教 / 空華学派 / 空華盧 / 僧鎔 / 道隠 / 塾則 / 正統と異端 / 宗学 |
研究実績の概要 |
2021年度は、まず前年度の研究成果を真宗連合学会第67回大会において「学国越中の研究―真宗私塾の原初形態をめぐって」と題して発表した。また同発表に基づく論文を執筆し、『眞宗研究 眞宗連合学会研究紀要』(第66輯、2022年)に掲載された。 さらに、研究実施計画に従い、引き続き真宗私塾に関する史料蒐集に努めつつ、近世・近代の本願寺派において最大勢力を誇った空華学派の私塾を分析した。特に①空華学派に関する言説整理、および②当学派の祖師・僧鎔(1723-1783)とその私塾「空華蘆」の分析を中心に取り組んだ。 ①に関して、空華学派が最大勢力となりえた背景に、三業惑乱での勝利、それに伴う多数の勧学職の輩出、さらに多くの門下育成などがあったことが指摘されていた。そこでは同学派が門下の数的優位をもって「主流派」と位置付けられ、同時にその教学の正統性が強調されたことで、主流派から「正統宗学」などと評されるようになった。結果、同学派の権威が飛躍的に向上した実態が浮き彫りとなった。 上記実態を受け、②では同学派が「主流派」や「正統」となりえた背景を、従来の教学を中心とする観点ではなく、彼らの組織運営術に着目することで再考した。他学派に類例を見ない空華学派の勢力拡大が、門下による新学派設立を拒否する「空華蘆塾則」の規定に起因することを明らかにした。以上、①②の成果は2022年度の日本宗教学会で発表する予定である。 尚、2021年度も当初、私塾が設置されていた寺院等で新出史料の蒐集や関係者への聞き取り調査を実施する予定であったが、コロナウィルスの感染拡大により、中止せざるを得なかった。本件については、次年度以降、状況を見極めつつ引き続き実施を予定している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は、過去に実施した調査や龍谷大学図書館等で蒐集した史料を用いて空華学派の私塾群について分析を実施することが出来た。しかしながら、コロナ禍の影響により、当初予定していた関係先寺院での史料蒐集を2カ年度連続で中止する事態なったため、やや遅れていると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度および2021年度を通して、従来未解明だった真宗私塾の黎明期や原初形態について、越中の事例を取り上げて明らかにした。今後は越中より全国に派生した空華学派の私塾群を中心に考察することで、真宗私塾の黎明期から成長期の歴史状況について分析する。特に、空華学派の祖師である僧鎔が育てた柔遠(1742-1798)と道穏(1741-1813)という二人の高弟のうち、前者は越中を拠点に「越中空華」を、後者は畿内を拠点に「堺空華」を形成し、それぞれ私塾を創設して多くの子弟を養成した。また、「空華学派の大成者」と称される松島善譲は後に九州に信昌閣を創設し、1500名もの門下を養成した。これらの関連塾の史料蒐集および分析を実施することで、真宗私塾の歴史と実態を詳らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2021年度もコロナウィルスの感染拡大の影響により、計画した関係先での史料蒐集や聞き取り調査のための出張旅費を計上することが困難となったため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は2022年度に行う出張旅費として支出する予定である。
|