2023年度は前年度までに収集した事例をもとに、ポップカルチャーにおける天皇表象の分析とそのアウトプットを行った。論文としては荒俣宏を論じた「「魔的なもの」の復活――荒俣宏『帝都物語』論」(『現代思想』51(10)2023年8月)を得たほか、口頭報告として、第3回天皇文学研究会での報告「虚なるものの強度 ――天皇(制)小説としての古谷田奈月『神前酔狂宴』――」において古谷田奈月の小説の分析、冷戦期日本文学研究会での報告「ベトナム戦争と妖怪 ―「ゲゲゲの鬼太郎 ベトナム戦記」をめぐって―」では水木しげるのマンガの分析、EAJS 2023 conferenceでの報告”Aramata Hiroshi and the magazine culture of 1970s Japan ”では、1970年代の荒俣宏についての分析、日本マンガ学会カトゥーン部会での報告「天皇マンガの可能性 -弱者性・スピリチュアリティとジェンダー-」では少女マンガを中心とした表象分析を行った。 研究期間全体を通じて単著1、編著1、論文3を得たほか、口頭報告を11報行った。これらの研究を通じて、現代における天皇・皇族がポップカルチャーに親炙した存在として自らを提示している動向を示すとともに、種々のテクストにおいて展開している天皇・皇族・皇室表象が人びとの天皇・皇族・皇室をめぐる想像力の生成に寄与している状況を明らかにした。
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