研究課題/領域番号 |
20K12826
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
赤塚 京子 京都大学, iPS細胞研究所, 特定研究員 (90814244)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 新優生学 / デザイナー・ベビー / 生命倫理 / 遺伝子操作 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、新優生学思想がどのような遺伝子観を前提としているのかを明らかにすることにより、この思想を理解・評価するための視点を獲得することにある。また、新優生学思想について理解を深めることを第一の目的としながらも、子孫への遺伝子操作をめぐる既存の倫理議論が遺伝子や遺伝に関してどのような前提のもと議論を進めてきたのか分析することで、これまでの議論の妥当性について検討を試みるものである。 具体的には、今日までに蓄積されてきた子孫への遺伝子操作(デザイナー・ベビー)に関する倫理議論を対象に、①論点を整理し、新優生学を軸とした論者間の対立構造を明らかにし、②各論者が前提としている遺伝子観(既存の議論において無自覚に前提とされてきた遺伝子や遺伝に関する知見)を分析・考察することで、遺伝子操作をめぐる議論の論理的妥当性を検討する。そのうえで、特に③新優生学を擁護する議論が前提としている遺伝子観をふまえて新優生学思想の一端を明らかにすることを目指す。 研究初年度である20年度は、上記のうち①を中心に進めた。文献は、新優生学に肯定的な論者であるN. Agar、A. Buchanan、J. Harris、新優生学に批判的な論者であるR. Sparrow、M. Sandel、J. Habermasのものや、それらを引用したものを中心に検討をすすめた。これに加えて、遺伝や遺伝子の概念をめぐる哲学的議論に関連した文献収集と内容把握を積極的に行い、次年度の研究計画実施に向けての準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に計画していた論点整理が概ね完了したため。
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今後の研究の推進方策 |
21年度は、①の作業をふまえて②について進めていく。それぞれの議論において前提とされている遺伝子観を分析していく。また、それと並行して、疾患や遺伝形質、遺伝子操作技術そのものについても、各議論においてどのように論じられているのか、―例えば、具体的に想定している疾患や遺伝形質、それらと技術との関連性についても可能な限り分析していく。こうした作業を通じて、既存の議論が前提としてきた遺伝子観を明らかにする。同時に、今年度進めてきた作業を研究成果としてまとめ、発表することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、当初予定していた学会や研究会がオンライン開催になったため、旅費を使用しなかった。また、今年度は学内のデータベースで入手できる文献が多かったため、予定より文献購入費がおさえられた。この分は、次年度の文献購入費に充てたい。
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