古代末期の知性論の中心となる「可能知性」や「能動知性」という概念によれば,人間は知性認識活動を可能的に有しており,世界は認識可能な対象として存在する。そうした対象や人間の認識が可能的な状態から実現に向かうことを可能にする原理として,能動知性がある。 本研究は,こうした目的論的な認識のあり方や世界観をプロティノスはアリストテレス主義と共有することを明らかにした。ただしプロティノスにとって,可感的な世界のみを説明できるアリストテレス主義的なカテゴリーは不十分であり,プラトン由来の知性的なカテゴリー「存在・動・静・同・異」による知性論の展開が必要であったことを明らかにした。
|