2022年度は、大衆文化における教祖像とのより広い視点から①研究成果の発表、②近代仏教研究の最新の成果に関する共著および書評の執筆、③国際会議を開催した。 ①では、十五年戦争期における親鸞像と日蓮像の比較として、明治以降の歴史小説と歴史研究の記述および、教団側の言説の変化や伝記との共通点や差異について、仏教文学会4月例会シンポジウムに招待されて報告した(「宗祖と戦争―悶える親鸞と戦う日蓮」、2022年4月)。また、明治期の演劇空間で表現された教祖像の実態を明らかにし、論文を発表した(「演じられた教祖―福地桜痴『日蓮記』に見る日蓮歌舞伎の近代」『近代仏教』第29号、2022年5月)。さらに、戦前期に理想的人格として語られた日蓮像に関して日本宗教学会第81回学術大会で報告した(「「英雄日蓮」と修養―偉人崇拝としての宗祖像」、2022年9月)。年度後半には、九条武子のイメージ形成に関して国際シンポジウムで報告した(「仏教婦人の肖像―九條武子の短歌と教化」日本学研究会第4回学術大会、2023年2月)。 ②については、『増補改訂 近代仏教スタディーズ』(法藏館、2023年4月)に執筆者として参加し、近代仏教文学に関する研究成果であるMichihiro Ama著The Awakening of Modern Japanese Fiction: Path Literature and an Interpretation of Buddhismの書評を執筆した(『近代仏教』第30号、2023年5月)。 ③では、研究の総括として国際シンポジウム「近代日本の仏教と文学」を東北大学で開催し(2023年2月)、国内外から研究者を招いて、近代日本の釈迦イメージの形成や仏教文学研究の手法に関する総合的討論を行った。 今年度も調査を踏まえた研究成果の発表ができ、釈迦像形成に関する国際共同研究も開始できた。空海像・最澄像に関しては明治末から昭和期の文学作品を収集し、彼らのイメージ形成について考察を進めることができた。
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