研究課題/領域番号 |
20K12838
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
藤原 佐和子 同志社大学, 研究開発推進機構, 共同研究員 (20735295)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | キリスト教 / エキュメニカル運動 / ジェンダー / セクシュアリティ / アジア |
研究実績の概要 |
本研究は、20世紀以降のエキュメニカル運動における「教会の一致」が「包括的共同体」(インクルーシブコミュニティ)に向けて拡充される思想的変遷と、その波及効果に関する検討を目的とする。以下に、2021年度の主要な研究業績を挙げる。 第一に、2010年代以降のキリスト教会及びキリスト教世界におけるジェンダー正義(gender justice)を推進するための諸運動が、グローバルレベル、地域レベル、ローカルレベルで展開されている現状を整理し、関連する神学論文を収集した。また、このような動きが、北米やヨーロッパの女性キリスト者たちの働きかけによって1948年の世界教会協議会(WCC)設立以前から提起されてきた点について、アムステルダムにおける設立総会の公式報告書をはじめとする一次資料を用いて検討した。 第二に、20世紀のエキュメニカル運動の最大の成果の一つに数えられている「信徒の再発見」とはいかなる事態かを論究し、WCC信徒部門を中心とする議論や、1960年代における「ラオス」(laos)、「神の民」としての「信徒」の全体性の理解を整理した。続いて、新たな信徒運動の興隆、運動の「教会化」と「聖職化」の問題を分析し、1990年代以降の「インクルーシブコミュニティに向けた信徒の参加」と呼ばれる新たな潮流における女性運動の影響について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度の研究を遂行する上で、特段の問題は生じていないため。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は延期されていたWCC第11回総会(於カールスルーエ、ドイツ)の開催が予定されている。オブザーバーとしての参加資格を得ているが、新型コロナウイルスの感染拡大の状況等を確認しながら、渡航の可否を慎重に検討したい。 国内における研究活動では、第一に、アジア・キリスト教協議会(CCA)に2000年まで設置されていた女性委員会(Women's Concernsと呼ばれる)において、インクルーシブコミュニティの実現に向けてどのような聖書研究、神学的考察、創造的実践が行われてきたかを調査し、第二に、エキュメニカル運動における「ジェンダー正義」がジェンダーにかかわる「平等」(equality)や「公正」(equity)などの類似概念とどのような関係にあるかについて、開発学、女性学、国際関係学、神学、宣教学などの史資料を用いて分析予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、国内外における出張の予定をすべて中止・延期としたため、2021年度も引き続き旅費の執行を行わなかった。
今後の使用に関しては、アジア・キリスト教協議会(CCA)に2000年まで設置されていた女性委員会(Women's Concernsと呼ばれる)の事例研究、エキュメニカル運動の内外における「ジェンダー正義」の概念整理等を主たる目的とする史資料の収集を計画している。
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