研究課題
本研究は、北の主要著書3冊(『国体論及び純正社会主義』『支那革命外史』『日本改造法案大綱』)をテキスト化してデータ分析を行い、この分析結果をもとに、①『外史』全体を分析し、変革期の北の「革命」論を抽出すること、② ①の結果を踏まえたうえで北の「革命」論に対する中国革命の思想的影響、『外史』から『日本改造法案大綱』へ至る北の「革命」構想の変化を明らかにすること、の2点を目的としている。20年度は主として、(1)主要著書3冊のテキスト化(基礎データの作成)、(2)『支那革命外史』にみられる北の『法華経』解釈の分析(『支那革命外史』における北の「革命」論の分析の一部)、を行った。(1)のテキスト化作業は業者に依頼した。誤字・脱字の確認や統計的なデータ分析に必要となる旧字体や変体仮名の変換などについては作業中だが、次年度以降はアルバイトを雇用し、作業速度をあげる予定である。また、(2)として北の『法華経』解釈の分析を行ったのは、彼の主張に大きな変化が見られる『支那革命外史』後半部において、近代をもたらす「革命」や「明治大皇帝」と関連する文脈の中で、『法華経』にまつわる言葉が多出するためである。基礎データを用いた分析により、『支那革命外史』後半部の「明治大皇帝」が、万世一系の皇室を核とした国民の合一により権化した阿弥陀如来として描かれていることが判明した。このことには、西洋のような市民革命の経験を持たない中でいかにして立憲国家を運営していくかという、明治期の日本や中国をはじめとするアジア諸国が直面した問題にも深く絡むと考えられる。そのため、次年度は「北の『革命』論が中国革命思想史のなかでどう位置づけられるのか」の分析を主とするが、この点についても掘り下げていきたい。
3: やや遅れている
テキスト化した主要著書3冊の基礎データの確認・修正作業(誤字・脱字の確認、統計的なデータ分析に必要となる旧字体や変体仮名の変換など)は、データ分析の要であり、緻密さが要求される。このため、学生アルバイトを雇うにあたっては、指示・意思疎通ができるよう同部屋での作業が望ましいが、コロナ禍の影響により、大学の構内立ち入りが制限されたため、今年度の学生アルバイトの雇用を見合わせた。これにより、データ分析の要となる、主要著書3冊の基礎データの確認・修正作業に遅れが生じている。また、他県への出張がしづらい状況が続いており、関係文献の収集についてもやや遅れが生じている。
今年度に入り、学内にオンライン環境を整えた部屋を確保できたので、状況をみながら学生アルバイトを雇用し、テキスト化した著書3冊(基礎データ)の精度を高めるとともに、統計分析に必要となる旧字体や変体仮名の変換などの作業を進める。またそのデータをもとに、北の『革命』論が中国革命思想史のなかでどう位置づけられるのか、孫文や章炳麟の革命論との比較を通じての分析に着手するとともに、『支那革命外史』にみられる北の『法華経』解釈の分析も継続して行う。
コロナ禍の影響により、学生のアルバイト雇用にあてる予定だった人件費および出張のための旅費を使わなかったため。
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