研究最終年度は、昨年度に引き続きフランスの精神科病院ラボルド・クリニックを拠点とし、調査研究を継続した。 フランスではコロナ禍による行動規制が日本より早く解除されていたため、個別面談も本格的に開始するなど、前年より密度の高い形で活動を展開することができた。具体的には、これまでの開かれた空間で行われていたミーティング(医師・患者・心理士等が自由に発言する場)に加え、少人数で行うアトリエや、一対一での対面面談などを十全に行うことができるようになった。 さらに滞在も二年目となったことで、研究者が常にそこにいる存在として認識されはじめると同時に、入院患者の中でも特に重篤とされる滞在者たちとの関わりが増えてきた。時間と場所を定めて面接を設定することが困難なこうした患者群との継続的な関わりは、症状や享楽についておおくの発見と示唆を与えてくれるものであった。しかし同時に、今まさに展開しつつあるような要素も多く、未だ十分に汲み尽くせていない部分も残る。そこで、最終年度以降もフランスにとどまり、ラボルド・クリニックでの研究活動を引き続き行うことで、本研究を発展的に継続させていくこととした。 本研究において得られた考察については、精神科医たちとの会議や、制度を使った教育論を専門するフランスの教育学者たちの学会等で定期的に発表したり、意見交換を行ってきた。今後は、フランスでの研究活動を継続しつつ、この成果をまとめて、日本における臨床に還元していきたい。
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