研究課題/領域番号 |
20K12841
|
研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
横山 俊一郎 関西大学, 東西学術研究所, 非常勤研究員 (60759827)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 泊園書院 / 藤澤東畡 / 藤澤南岳 / データベース / 碑文 / 実業家 / 企業家 / 地域社会 |
研究実績の概要 |
当該年度の研究では、泊園門人の略伝集『泊園書院の人々』(仮題)の出版に向けて、その原稿を作成するとともに、執筆過程で得られた知見や構想をその都度発表した。 泊園門人の略伝については、関西大学教授・吾妻重二氏が「泊園人物列伝」(『泊園書院歴史資料集―泊園書院資料集成1―』関西大学出版部、2010年)の中で五十名ほどを紹介しているに過ぎず、その網羅を目指した試みはこれまでなされてこなかった。しかし、今回作成した略伝は、当該年度末において、すでに五百名以上に達しており、これが完成し正式に出版されると学術的に大きなインパクトを与えることができる。また本研究の課題に照らせば、泊園門人の行動面、とりわけその修学および業績をトータルに把握できるまとまった資料を作成することにつながり、これから泊園門人の意識面を考察する際にも大いに役立つことが期待できる。 泊園記念会が主催する泊園記念講座と同会が出版する雑誌『泊園』では、この作成した略伝の幾つかをピックアップして発表した。前者については、南岳百年祭という記念すべき行事が行われ、ここで最新の知見としての門人の事蹟を一般の方々に向けて発信することができたのは大きな成果であった。 また日本中国学会と経営史学会では、泊園門人のうち実業家や企業家に注目したうえで、この作成した略伝の全体を踏まえた構想や見通しを発表した。両学会において強調したのが、明治期における泊園書院と実業界との深いかかわりであり、学主ばかりに注目されがちであった漢学塾研究の流れを改めてより広い視座―塾の門人に加えて学主に撰文を依頼した支持者の存在をも含めて―から考察する必要を提起することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該年度の半ばに、急遽、泊園記念会からの助成を受けて泊園門人の略伝集『泊園書院の人々』(仮題)を出版することが決まった。このため、泊園書院の門人のうち、尊攘運動家・都市名望家・農村名望家・漢文科教師・医療従事者として活躍した人々を個別的に考察する計画を見直し、上記の出版に向けての資料収集と略伝執筆に専念することとなった。しかし、門人の略伝データの全体から個別の事例研究を位置づける試みは、当初から予定していたため、計画そのものに大きな遅れは生じていない。むしろ、門人の略伝集の出版をとおしてみずからの成果をより多くの人に知ってもらう機会を得たので、当初の計画以上に研究が進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
何よりもまず『泊園書院の人々』(仮題)を出版することを目指したい。その時期は次年度の半ばごろを想定している。同書には、泊園門人の行動面、とりわけその修学および業績に加えて、生没年・出身地・身分・続柄など、泊園書院の門人研究を進展させるうえで不可欠な基礎データが多く掲載されることとなる。このことは、漢学史のみならず経営史や地域史、医療史といった異分野の研究者にとっても有益な情報を多く提供することにつながると考えられる。これらの隣接する研究者集団からの感想や批判などフィードバックを得ながら、それぞれの地域社会において尊攘運動家・都市名望家・農村名望家・漢文科教師・医療従事者として活躍した泊園門人の個別研究を進めることとしたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
急遽、門人の略伝集の出版が決まり、それに伴って旅費が少額にとどまったことにより未使用分が生じた。これは次年度に計画している門人の個別研究を進める中で消費される予定である。
|