研究課題/領域番号 |
20K12844
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
高木 駿 北九州市立大学, 基盤教育センター, 准教授 (90843863)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 美学 / 哲学 / カント / 自然 / 感情 / 認識論 / 醜さ |
研究実績の概要 |
2021年度は、I. カントの『判断力批判』における不快の感情の類型を踏まえて、自然の対象と関わる不快のなかで崇高と関わらない感情をいくつかに分類し、それらの不快に対応する「自然の醜さ」の解明を試みた。 まずは、『判断力批判』の分析を通じて、崇高と関わる/関わらない不快の感情の分類を行った。その結果、理性と構想力という心の能力の連携的な関係を基準として、それらが働いている場合に生じる感情を崇高と関わる不快として、働いていない場合に生じる感情を崇高と関わらない不快として分類することができた。さらに、二種類の不快に連続的に股がる感情(乱雑さ、グロテスクさ、複雑さ)を発見することもできた。 つぎに、崇高と関わらない不快の感情について、構想力と他のこころの能力(感官や悟性)との関係を参照することで、より詳細な分類を行い、対応する醜さを解明した。結果として、感覚的な調和を欠いた状態である不快適さと生理的な嫌悪という醜さ、および、知性的な調和である整然さを欠いた感情と乱雑さという醜さを分類することができた。後者の乱雑さについては、心のありようによっては、崇高に関わる不快と連続的になりうることも明らかにされた。 2020年度に引き続き、コロナ禍での研究となったが、オンラインでの学会発表を行うなど、状況に応じた発表を行うことができた。ただし、予定していたドイツでの在外研究やワークショップは中止・延期せざるをえなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度に計画していた、崇高に関わる/関わらない不快の感情の分類、そして、崇高に関わらない不快の感情のさらなる分類とそれに対応する醜さの解明については、その目的を達成することができた。さらに、2021年度の研究を通じては、崇高に関わる/関わらない不快のどちらにも分類できない、あるいは、どちらにも関わりうる感情を発見することができた。この選択肢は、今後の分類化と体系化を行ううえで重要になると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、当初の予定通り、『判断力批判』における不快の類型に基づき、自然の対象に関わる崇高を引き起こす不快の感情を特定し、それらの不快に対応した「自然の醜さ」を解明する研究を行う。まずは、『判断力批判』の「崇高論」という箇所の分析を通じて、崇高と関わる不快が生じるあり方・構造を考察する。ここでは、不快に応じた「自然の醜さ」として、当然ながら、崇高を引き起こす醜さが解明されることになるだろう。つぎに、崇高と関わる「自然の醜さ」と道徳との関係を明らかにする。崇高には道徳的な含意があることが指摘されてきたが、崇高に関わる「自然の醜さ」も、道徳的な含意を持ち、道徳に資するのかどうかの確認を行う。ただし、その際には、醜さが道徳に資する事態を、直感に反しない形で説明しなければならない。
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