研究課題/領域番号 |
20K12850
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
川崎 佳哉 早稲田大学, 文学学術院, その他(招聘研究員) (50801792)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アメリカ映画 / 一人称映画 / エッセイ映画 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、映画監督がカメラの前に立って演じる「一人称映画」について研究し、アメリカ映画史におけるパーソナルな映画実践の系譜を明らかにすることである。それと同時に、パーソナルという観点からアメリカ映画史全体を捉え直すことによって、これまでは大衆的な娯楽映画と考えられてきた個々の作品に個人的なものを探り、大衆的なものと個人的なものの絡み合いからアメリカ映画を再考するための切り口を提示することを目指している。 今年度は、オーソン・ウェルズのラジオ・ドラマにおける「一人称単数」の語りについての論文を発表することができたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響のため、研究実施には大きな困難が伴った。そのような状況においても、今年度の計画として予定していた「一人称映画」に関する理論的考察をおこない、可能な範囲で研究を展開することができた。とりわけ、「パーソナルな映画」もしくは「一人称映画」としてしばしば論じられるエッセイ映画に関する文献を精読し、そこで「パーソナル」や「一人称」という語が使用されている文脈や、それらの概念をフィクション映画に適用することの可能性、などを検討した。また、カメラの前に自ら立つという「一人称映画」の実践と、映画における「作家性」の関係性について考察を深めたことは、今後の研究のベースを形成できた点で大きな進展であった。さらに、こうした理論的考察と並行して「一人称映画」の歴史について検討した結果、スタジオ・システム崩壊後のアメリカ映画をパーソナルな映画実践との関係から捉え直すことの重要性をあらためて認識することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の初年度である今年度は、新型コロナウイルス感染拡大によって社会が大きく混乱するなか、研究を予定通り進めることが難しかった。しかし、エッセイ映画に関する先行研究の精査と、それらの論点のフィクション映画への適用可能性の検討に関しては、予定通りに進めることができた。「一人称映画」についての理論的考察を通して今後の研究のベースを形成することができたので、今年度の遅れを早急に取り戻すことは十分に可能である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、実際の映画作品の分析をおこなっていく。主な分析対象として予定しているのは、スタジオ・システム崩壊後、とりわけ1960年代後半から1970年代の映画である。「一人称映画」についての理論的考察を継続しつつ、それらの映画作品をパーソナルな映画実践という問題との関係から検討する。この時代の映画(ジョン・カサヴェテス、デニス・ホッパー、クリント・イーストウッドらの作品を予定している)の具体的分析を推進し、一定の成果を挙げることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、研究全体に遅れが生じてしまい、予定していた金額を使用することができなかった。翌年度分と合わせた使用計画としては、第一に書籍や映像などの資料の購入が挙げられる。第二に、感染の拡大状況次第であるが、当初の計画としては2021年度はアメリカでの資料調査を予定していたので、可能であればニューヨーク公共図書館などでの調査を実施する。
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