研究課題/領域番号 |
20K12850
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
川崎 佳哉 早稲田大学, 坪内博士記念演劇博物館, 助教 (50801792)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 一人称映画 / アメリカン・ニューシネマ / デニス・ホッパー |
研究実績の概要 |
本研究の対象である「一人称映画」について、1960年代後半から70年代のアメリカ映画、いわゆるアメリカン・ニューシネマに焦点を当て、理論的な見地から作品分析を含めた研究を実施した。本研究は、監督が俳優として自作に出演する映画を「一人称映画」と呼び、その実践が持つ映像文化論的な可能性を検証するものである。「一人称映画」は、今日のスマートフォンによる自撮り文化にも通じるものであり、その可能性の射程を見極めることは現代社会の映像のあり方について考察するうえで極めて重要である。このような前提から研究を進めてきたが、2021年度には、「一人称映画」とアメリカン・ニューシネマの関係について考察した。その理由は、アメリカン・ニューシネマの精神ともいうべきものが、それまでのスタジオ・システムのもとで分業によって製作されてきたハリウッド映画とは異なり、自分たちで個人的(パーソナル)な映画を作るという、「一人称映画」のあり方と極めて近い位置にあったからだ。そして、この関係について考察するうえで最も重要な作品の一つは、デニス・ホッパーが監督兼出演した1969年の映画『イージー・ライダー』である。『イージー・ライダー』は、アメリカン・ニューシネマの記念碑的作品として知られているが、それだけではなく「一人称映画」という観点から考えた場合に極めて興味深い作品である。なぜなら、チャールズ・チャップリンやバスター・キートンといったそれ以前の自作自演映画作家たちとは異なり、ホッパーによる「一人称映画」の実践はカウンター・カルチャーにおける文化のパーソナル化とでも呼ぶべき流れと密接に結びついていたからだ。このような観点から2021年度は、『イージー・ライダー』とそのほかのホッパーが監督兼出演した映画(とりわけ1971年の『ラスト・ムービー』)についての資料を精査し、具体的な映像テクストを分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目である2021年度も新型コロナウイルス感染症拡大の影響が継続しているため海外への研究出張を実施することは叶わなかったが、当初の予定通り1960年代後半から70年代のアメリカン・ニューシネマの調査を行い、具体的な映像テクストの分析を進めることができたため「おおむね順調に進展している」と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
アメリカン・ニューシネマにおけるパーソナルな映画実践をより深く考察することと並行して、1970年代から現在に至るまでの「一人称映画」の展開を調査する。監督が俳優を兼任するケースが今日の映画業界においてどの程度見られるかに関する基礎的な調査などを含め、具体的な映像テクストの分析をさらに進めつつ「一人称映画」の現代的な意義を明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度も新型コロナウイルス感染症拡大の影響が継続したため、予定していた海外への研究出張を実施することができなかった。当初の計画ではニューヨーク公共図書館への資料調査を予定していたので、(感染症の拡大状況次第であるが)2022年度にこの調査を実施することを考えている。
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