研究課題/領域番号 |
20K12850
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
川崎 佳哉 早稲田大学, 坪内博士記念演劇博物館, 助教 (50801792)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アメリカ映画 / 一人称映画 / 自作自演 |
研究実績の概要 |
2022年度は、1970年代以降の「一人称映画」を主な対象として、文献精読と映像テクストの分析を進めた。今日に至るまでの「一人称映画」を取り上げることによって、俳優兼監督たちが自作自演することの現代的な意義について考察することができた。その過程において、早稲田大学坪内博士記念演劇博物館2022年度秋季企画展「村上春樹 映画の旅」を企画・構成した。村上春樹は日本の小説家であるが、アメリカ映画、とりわけ1960年代後半以降のアメリカン・ニューシネマから多大な影響を受けてきたことはよく知られている。展示では『一人称単数』(文藝春秋、2020年)という著書もあるこの小説家と映画の関係性について包括的に検証し、開催に合わせて刊行した図録=早稲田大学坪内博士記念演劇博物館監修『村上春樹 映画の旅』(フィルムアート社、2022年)では編著者を務めた。 2022年度の大きな収穫は、研究を進めるなかでインディペンデント映画の重要性をあらためて認識できたことである。本研究は、監督たちが自作自演する映画=「一人称映画」を対象としているが、そこで問題となるのは、撮る/撮られること、及び両者の関係性である。このような撮る/撮られることは、大手映画会社のシステム下で生産されるハリウッド大作ではなく、小規模で作られ、ときに身近なもの同士で映画を撮り合うインディペンデント映画の実践においてこそ全面的に展開されてきた。本研究は監督による自作自演に注目してきたが、インディペンデント映画について考察することによって、より広く撮る/撮られることという実践が持つ意義を明らかにする可能性が見えてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では最終年度であったが、新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴う社会的な混乱のために研究が遅れた分、期間を延長することとなった。海外での資料調査ではなく映像テクストの分析などを優先することで研究がスムーズに展開するときもあったが、やはり全体としてはペースがやや遅れている。2022年度は映画だけではなくテレビドラマまで研究の対象を広げる予定であったが、文献調査やいくつかの作品に対する分析に着手することができたものの、考察を深めるまでには至らなかった。この3年間で遅れた進行を取り戻すことが次年度の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
研究の範囲を現代のテレビドラマにまで拡張し、映画とテレビにおけるパーソナルな映像実践について広く考察する。また、これまでの研究で得られた知見をまとめつつ、アメリカ映画史における「一人称映画」をより一般的な「自作自演」というタームで整理し直す。さらに、本研究の成果として、『ラストムービー』(デニス・ホッパー監督、1971年)についての学会発表もしくは投稿論文を執筆することを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に開始された本研究は、新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴う社会混乱のなか、当初の研究を予定通り展開することができない状況に常にあった。そうしたなか、予算を使用するペースも変更を余儀なくされたため、2022年度に関しても次年度使用額が生じざるを得なかった。2023年度には、図書資料費、映像資料費、海外出張旅費として使用する計画である。
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