研究課題/領域番号 |
20K12863
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研究機関 | 嵯峨美術大学 |
研究代表者 |
加茂 瑞穂 嵯峨美術大学, 芸術学部, 講師 (70705079)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 図案 / 染織 / 京都 / 近代 / 工芸 |
研究実績の概要 |
本研究は、美術工芸製品の参考となるアイデアが描かれた「図案集」の収蔵状況を明治期の京都を中心に把握し、どのような図案集が「ものづくり」において求められてきたのかを明らかにするものである。本研究では2021年度、以下2点を実施した。 1.京都の所蔵機関における図書原簿調査では、京都高等工芸学校、京都美術工芸学校、京都府図書館の図書原簿・所蔵目録の内、明治期に購入された図案集、図案関連資料を抽出した。書名・編著者・購入年月などの基礎情報を入力できるフォーマットを準備し、原簿の情報を蓄積した。なお、同時に資料の現存状況についても確認を進め、次年度以降書誌調査、データベース構築のための準備を進めた。予定していた基礎的な情報の蓄積は完了することができた。 2.図案集の書誌調査は、引き続き新型コロナウイルス感染拡大により所蔵機関の利用が制限されたため、十分に行うことができなかった。しかし、西川祐信による『正徳ひな形』の輪読や研究をまとめた書籍『西川祐信『正徳ひな形』―影印・注釈・研究』(臨川書店)を刊行することができた。同書において『正徳ひな形』を明治期に復刻した『四季のよそほひ』も取り上げることができ、近代における江戸時代の雛形本に対する受容、及び明治期における図案集の具体的な利用方法を明らかにすることができた。また、書籍刊行を記念したシンポジウム「小袖をめぐる言葉と形―西川祐信『正徳ひな形』を読む―」も開催することができ、一定の成果を蓄積している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度も新型コロナウイルスの影響により、所蔵機関への集中的な調査はおこなうことができなかったものの、書誌情報は継続的に蓄積することができた。また、事例調査に集中したことにより書籍刊行やシンポジウム開催、国際学会における発表など研究成果まとめ、発信をすることができたため。 事例調査の一環として、京都で近代に制作されたきものを武庫川女子大学附属総合ミュージアムにおいて調査することができた。同館には、図案集や図案の展開をきものから考察することができる資料が蒐集されていることがわかり、2022年度の研究へとつながる活動ができたため。
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今後の研究の推進方策 |
東京への出張・調査は見通しが立ちにくいため、関西圏での活動を中心とする。 京都市内の図案集所蔵機関の原簿の記載情報はおおよそ蓄積することができたため、所蔵資料を閲覧しながらさらなる情報蓄積と具体的な考察をすすめる。所在情報に関しては、具体的なデータベース設計も視野に入れながらデータの整理を進める。 2022年度は京都で制作された近代のきものを所蔵する武庫川女子大学附属総合ミュージアムムを調査対象とする。明治期の染織図案がその後のきものへいかに展開されたのかを事例調査として進めていく。事例調査によって、図案や図案集の産業的な展開が消費者へどのように製品として流通していたのかを知ることができる。その調査・研究成果を展覧会として武庫川女子大学附属総合ミュージアムにおいて今秋開催する。
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次年度使用額が生じた理由 |
長距離出張をおこなわなかったため。 次年度以降のデータベース構築費用へ充填する。
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