研究実績の概要 |
伝教大師最澄の自刻伝承をもつ、比叡山延暦寺根本中堂本尊の薬師如来立像は、現存しないものの、古来その名が広く知られ、模刻の対象となった。他にも、比叡山横川中堂本尊の聖観音菩薩立像や、園城寺の黄不動尊像など、天台宗では信仰を集めた霊像を模刻することが多い。本研究は、史料上に知られる模刻の事例を収集・分析し、あわせて模像作品に対して調査を実施することで、天台宗の模刻を通した新たな視点から、中世仏教形成の一端を探るものである。 2023年度は、勤務先で寄託を受ける浅草寺の仏像についてX線CTデータを分析し、報告書の刊行準備を進めた。また、比叡山延暦寺根本中堂本尊について、滋賀県のイベント((仮称)新・琵琶湖文化館に関する県民フォーラムⅢ)で対談を行なった。なお、関連研究として、薬師如来に付属する十二神将像のCT報告をパネル発表で行なった(鳥越俊行, 西木政統, 宮田将寛, 小池富雄, 長谷川祥子, 降幡順子, 池田素子, 浅見龍介, 淺湫毅「京都・浄瑠璃寺に伝来した十二神将立像に対する CT 調査と修理」、文化財保存修復学会第45 回大会、2023年6月24日)。また、東京国立博物館所蔵の法隆寺献納宝物に含まれる伎楽面等のX線CT撮影報告書を刊行した(東京国立博物館編『法隆寺献納宝物特別調査概報 43 伎楽面X線断層(CT)調査』東京国立博物館、2024年3月29日)。
|