研究課題/領域番号 |
20K12874
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研究機関 | 神奈川県立近代美術館 |
研究代表者 |
菊川 亜騎 神奈川県立近代美術館, その他部局等, 研究員 (50826310)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 抽象美術 / 戦後美術 / 彫刻 / 美術批評 / 近代美術館 / 野外彫刻 / 戦後日本美術 |
研究実績の概要 |
本研究は近代美術館の展覧会と企画に関わった美術批評家の言説をひもとき、彫刻における抽象作品への評価と抽象概念への理解がいかに築かれていったか、1950年代を中心に検証するものである。 2020年度は神奈川県立近代美術館が所蔵する展覧会資料(出品目録、解説、記録写真、関連資料)の調査に注力したが、本年はこれをもとにして、副館長で美術批評家でもあった土方定一の美術館刊行物の論考、そしてこれと並行して書かれた雑誌や新聞記事を再調査し、数本の論文として発表した。まず、近代美術館で強い理念のもと開館10年のうちに展覧会を通して彫刻史の読み直しと再構築が進められたことを明らかにし、『開館70周年記念 空間の中のフォルム―アルベルト・ジャコメッティから桑山忠明まで』(展覧会報告書)に論文として発表した。 一方、抽象的な表現が一般化する1950年代後半は、素材を媒介に彫刻と工芸が近接する時代でもあった。このような動向に対しても、土方は岩田藤七など現代工芸の先駆者を工芸史および美術史のなかに位置づけ直す活動もしており、これについて『岩田色ガラスの世界展 岩田藤七・久利・糸子』(展覧会図録)に論文として発表した。 また抽象へのまなざしと対比させるため、本年は新制作派美術協会(現・新制作協会)を中心とする具象彫刻に対する言説についても調査を進めた。以上のような彫刻史の再編において野外彫刻展は重要な意味を持ったが、本年は宇部市野外彫刻展の研究について飛躍的に研究が進んだため、今後は外部の研究者と意見交換しつつ、包括的な理論構築を目指したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一次資料の調査、整理から理論構築をすすめ、研究の一部を公共性の高い研究成果の公表に結びつけることができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き各美術館図書館、国会図書館、学術的考察を行うための資料収集および理論構築のための文献調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた調査を翌年度に進めるよう変更したため。
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