研究課題/領域番号 |
20K12892
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
吉田 隆之 大阪市立大学, 大学院都市経営研究科, 准教授 (00771859)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 芸術祭 / 地域づくり / アートプロジェクト / ボランティア / トリエンナーレ / あいちトリエンナーレ / 表現の自由 |
研究実績の概要 |
本研究では、2020年以降数ヶ年で開催から約10年が経過する水と土の芸術祭、いちはらアート×ミックス、札幌国際芸術祭の3事例の芸術祭を中心に、地域づくりの中長期的効果・具体的プロセスを定性的に分析することとしていた。しかし、水と土の芸術祭はそもそも首長の交替による政策転換もあり、行政主導の芸術祭としての開催は2018年度が最後となった。加えて、コロナ禍で、2020年度に開催予定だったいちはらアートミックスが延期され、札幌国際芸術祭は中止とされ、研究の進捗がままならない状況となった。 一方で、あいちトリエンナーレについては、長者町地区を中心に、すでに中長期効果等を明らかにしており、上記3事例との比較を行う予定であった。 そうしたところ、あいちトリエンナーレ2019により、一部の作品を攻撃する電凸などで展示中止となった事態が起き、かつ、閉幕後新たな市民活動の芽がめばえている。そこで、あいちトリエンナーレ2019にまつわる事態の調査・分析に比重をうつし、研究成果を単著『芸術祭と危機管理‐表現の自由を守るマネジメント』にまとめた。すなわち、まず、あいちトリエンナーレ2019で、電凸などで展示中止となった事態を、網羅的、時系列で概観し、客観的な事実を明らかにした。そのうえで、表現の自由・芸術の自由、公的補助金問題、検証委員会のありかた等を含む「あいちトリエンナーレ」を巡る論点を分析した。なかでも、芸術祭の地域づくりの観点から、閉幕後にボランティアを主体として市民活動が継続された点に注目し、都市型芸術祭で、ボランティアが脇役でなく主役となり、地域とアートの両方に通じた人材として育つ可能性に言及した。あいちトリエンナーレについては、長者町地区に限定し、自発性・協働性に着目した分析をしてきたが、札幌国際芸術祭と同様に、都市全体、かつボランティアの主体性向上に視点を広げていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記のとおり、当初研究対象と予定した水と土の芸術祭、いちはらアート×ミックス、札幌国際芸術祭の3事例がいずれも中止となったことから、初年度については研究の進捗が大幅に遅れた。それでも、あいちトリエンナーレ2019にまつわる事態で起きたあらたな市民活動の在り方に注目し、調査・分析を行った。
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今後の研究の推進方策 |
水と土の芸術祭については、終了後も、活動を継続する「小須戸ARTプロジェクト」に着目し、今後も調査、分析を継続していく。いちはらアート×ミックスは、2021年度部分開催もままならない状況にあり、今後の動向を引き続き注視していく。札幌国際芸術祭については、札幌資料館を中心とした恒常的活動や次回2023年度の展開をとらえていきたい。2021年度秋からサバティカルで渡欧の予定である。国内の芸術祭の開催がままならない状況が続けば、海外の芸術祭の調査、分析を行い、国内の芸術祭との比較も検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、コロナ禍で現地調等ができなくなったこともあり、旅費の一部に未使用が生じた。次年度以降の現地調査の旅費にあてることとしたい。
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