2020年以降数ヶ年で開催から約10年が経過する水と土の芸術祭、いちはらアート×ミックス、札幌国際芸術祭の3事例の芸術祭を中心に、地域づくりの中長期的効果等を定性的に分析することとしていた。しかしながら、政策転換やコロナ禍で中止・延期される芸術祭が相次ぎ研究の進捗がままならい状況がつづいた。とはいえ、最終年度は、コロナ禍が改善され、国内で芸術祭が開催され、現場でのリサーチが可能となった。 これまで、芸術祭の地域づくりについて、一時的な経済波及効果は確認できるものの、開催から数か年では、継続的な変化につなげることは容易でないことも明らかとしてきた。それに対し、コロナ禍を経て、芸術祭を契機として、芸術祭から自立的に活動し、しかも10年以上継続するプロジェクトが各地で見られる状況にある。 そこで、2023年度は、芸術祭を契機として自立的に活動するプロジェクトとして、「いちはらアート×ミックス」(千葉県市原市)を契機とした「森ラジオ ステーション×森遊会」、「水と土の芸術祭」(新潟市)を契機とした「小須戸ARTプロジェクト」を取り上げ、とくに、前者については、アート活動を軸に橋渡し型ソーシャルキャピタルが形成されたとする余地があることに注目した。 一方で、コロナ禍で国内芸術祭のリサーチがままならないなか、2021年度~2022年度にかけて海外芸術祭の調査を行い、2023年度は、結果のとりまとめと分析をおこなった。なかでも、「マニフェスタ14」(コソボ)、「ドクメンタ15」(ドイツ)等の地域づくりの実践に着目し、それを芸術祭のアートマネジメントとして広くとらえ、2023年度学長部局予算を活用したシンポジウム開催などで、芸術祭について欧米型アートマネジメントに追随してよいのか、アジア型アートマネジメントによりフォーカスしていく必要がないかという問題提起をした。今後の研究課題としたい。
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