2020年度に音楽家に対しアンケート調査を行い、結果の集計、分析を施行した。特にリスクの高いと言われるフルート奏者についての分析を優先して行い、2020年度のヨーロッパ手外科学会での発表を行った。得られた知見としてレベルを問わないと何らかの症状があると答えた有訴者は62.3%でプロフェッショナルでは73.3%、アマチュアでは51.6%であった。2群間での有意な差は認めなかった。有訴者の中で最も症状が多かった部位は手指で肩などが続き上肢への負担が大きいことが示唆された。年齢、経験年数、平均活動時間などの調査項目で有訴者と非有訴者の間での有意な差は平均活動時間のみで認めた。 これらのことから平均活動時間が長い奏者では有意に障害が生じる可能性があると考えられた。またこれまでの報告ではフルート奏者では非対称な演奏姿勢や手指の可動域が広いこと楽器を支える指への負担が大きいことなどが指摘されており我々の調査でも上記によると思われる疼痛が多く見られた。これについては姿勢や楽器などの工夫などで対応していく必要があると考えられた。また有意な差は得られなかったが高いレベルの奏者では障害を生じやすい傾向がありこれは練習時間が長いことに加え精神的なストレスも多くかかることが一因と推察された。今後対象の楽器を増やし、対象数を増やしていくことでさらに精度の高い研究にしていく必要があると考えている。また直接の診察や指導を行うことで改善への方策の知見を蓄積していくことも重要である。
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