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2021 年度 実施状況報告書

インドネシアを中心とする東南アジアの美術家集団にみる現代美術の社会的役割の考察

研究課題

研究課題/領域番号 20K12900
研究機関国際ファッション専門職大学

研究代表者

廣田 緑  国際ファッション専門職大学, 国際ファッション学部, 准教授 (30796298)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード東南アジア / インドネシア / 現代美術 / 美術家集団 / コレクティヴ / 相互扶助 / ソーシャリーエンゲイジドアート
研究実績の概要

本研究の目的はインドネシアに重点を置きながら、その他、東南アジア諸国の現代美術の具体的な事例をもとに、現代美術の実践がどのように社会的な役割を果たしうるのか/えないのかを明らかにすることである。第二次世界大戦後にアメリカで誕生した現代美術は1970年代後半になって、独立後の政治的混乱が残るインドネシアの美術家たちによって受容され、”民衆の代弁者”として政治批判をし、世相を映す”インドネシアの”現代美術(seni kontemporer)として発展した。
2015年頃からソーシャリーエンゲイジドアート(社会関与型アート)と呼ばれる、社会問題に深くコミットするアート実践が目立ち始めた。その多くは美術家集団(アーティスト・コレクティヴ)によるものである。
本研究は、彼らが集団で実践する社会関与型アートを事例に、現代美術がいかに社会的役割を果たしうるのかを明らかにするものである。しかし、これまでは予定していた国際展ART/JOG(インドネシア)の現地調査を2年続けて断念した。現地では来場者を大幅に制限しオンラインで新たな展覧会の形を模索しており、新型コロナウィルスが現代美術活動に大きな影響を与え、美術家集団の実践が協働、相互扶助といったものに向かっていったことが確認できた。
2021年5月には福岡芸文館で開催されたアーティスト・コレクティヴに関するシンポジウムで申請者が基調講演を行った。また山口情報芸術センターで11月に開催されたインドネシアのアーティスト・コレクティヴSERUUMの展覧会ではシンポジウムで通訳兼進行役を務めた。後半からはZOOMやSNSのメッセージ機能での調査方法(インフォーマントへの聞き取り)を模索した。また新型コロナウィルスの長期的影響から現地調査が不可能になることを想定、調査対象国の美術書を国内で入手して文献から情報収集を試みた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

「(4)遅れている」を選択せざるを得ない最大の原因は、新型コロナウィルスによる渡航制限である。
初年度に予定していたインドネシア、マレーシアでの調査を断念しただけでなく、国内で予定していた福岡アジア美術館での文献調査も緊急事態宣言のため、図書館が閉館となったために延期した。

今後の研究の推進方策

本研究課題では、研究方法の中でもっとも重要な役割である現地調査について、今後の新型コロナウィルスの動向を踏まえながら、代替策も想定していくことが推進方策の最大の鍵となると考えている。2021年度に2度のワクチン接種が終了しており、5~6月頃には3度目の接種を予定している。加えて、調査地における新型コロナウィルス関連の情報をこまめに確認し、安全を見極めた調査計画を立てると共に、渡航中止の場合の調査方法についても、考慮しなければならない。
本研究では、私がもっとも長期にわたってフィールドワークを行ってきたインドネシアを拠点として、まだ調査に入っていない東南アジア諸国へ足場を延ばしていく計画だった。手法としては、私自身が美術家でもあるという点を活かし、直接美術家のコミュニティに入り込み、様々な聞き取りを行うというものである。どのような実践を行っているのかは、現地で直接見聞きするのが最善の方法だが、現状を鑑み、インフォーマントとなる美術家たちの発信するフェイスブックやインスタグラムをしっかりフォローし、そのデータの積み重ねから、現代美術の実践がどのように行われているのかを考察する方向へ向けていきたい。
予算に計上している海外調査費は、今後の状況次第では報告書(論文資料集)の印刷費と翻訳代へ転用し、充実した研究の計画に立て直したい。
2022年度に調査予定の大型国際美術展「ドクメンタ2022」(ドイツ カッセル開催)は、本研究で重要な位置を占めるものである。本研究の重要なインフォーマントである、インドネシアの美術家集団ルアンルパはすでに現地入りし、参加作家の発表も始まった。6月22日からの開催に合わせ、短期間でもよいので、調査に行きたいと考えている。可能になった場合には、この機会にヨーロッパにおける東南アジア諸国の現代美術のポジションなども確認しておきたい。

次年度使用額が生じた理由

最も大きな理由は、インドネシアとマレーシアでの現地調査、また国内での文献調査を行うことが殆どできなかったことにある。2021年度後半になり、やっと福岡アジア美術館図書室での文献調査を行うことができたが、大きく獲得している海外渡航費の支出がなかった。
2022年度は、新型コロナウィルスに対する楽観的想定をするのはやめ、現実的かつ確実に情報収集する方法を昨年度以上に模索しなければいけない。
2022年度は、(1)現地調査で実際に店頭へ足を運び購入する予定だった参考文献を、各国の通販サイトなどから購入する。(2)東京の国際交流基金アジアセンターのシンポジウムなどの文献も、調査の対象に含める。(3)渡航する調査の中でもっとも重要なドイツ、カッセルでのドクメンタ展(2022年6~7月開催)には、なんとしても渡航ができるよう、自身の健康管理、学務との調整、現地の新型コロナウイルスの状況把握を行う。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] インドネシア現代美術への招待第1回インドネシア現代美術「スニ・コンテンポレル」の躍動2022

    • 著者名/発表者名
      廣田緑
    • 雑誌名

      Monthly Indonesia

      巻: 884 ページ: 32-35

  • [雑誌論文] インドネシア現代美術への招待第2回:人口1056万のメトロポリス、ジャカルタのアートシーン2022

    • 著者名/発表者名
      廣田緑
    • 雑誌名

      Monthly Indonesia

      巻: 885 ページ: 32-25

  • [雑誌論文] インドネシア現代美術への招待第3回:ジャワのパリ、バンドゥンのアートシーン2022

    • 著者名/発表者名
      廣田緑
    • 雑誌名

      Monthly Indonesia

      巻: 886 ページ: 21-25

  • [学会発表] コレクティヴと考える―パンデミック以降の地域文化活動の可能性2022

    • 著者名/発表者名
      廣田緑
    • 学会等名
      九州芸文館オンライン・トークイベント
    • 招待講演
  • [図書] 聖性の物質性2022

    • 著者名/発表者名
      木俣元一、佐々木重洋、水野千依、大村敬一、中尾世治、奥健夫、栗田秀法、廣田緑、松崎照明、古谷嘉章、松井裕美、橋本栄莉、須網美由紀、出口顯、秋山聡、杉山奈生子、芳賀京子、杉山美耶子、森雅秀、奈良澤由美、樋口諒
    • 総ページ数
      680
    • 出版者
      三元社
    • ISBN
      978-4-88303-548-9

URL: 

公開日: 2022-12-28  

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