1) 最終年度:8月にドイツ・フランクフルトで開催された国際東アジア科学史学会において「Astral Science in the Context of Cultural Encounters」と題するセッションを組織し、「Traditional Time with Changing Rulers: Lunisolar Calendar in Modern Okinawa」というタイトルで発表した。本発表は、「琉球処分」から沖縄の「本土復帰」までの約100年間に、統治者が三度も変わるなかで、太陰太陽暦(旧暦)が琉球・沖縄の人びとにとって何であったのか、旧暦の位相がどのように変化したのか、どのようにして旧暦が「生き残った」のか、を論じたものである。 2) 期間全体 研究期間の開始がコロナ禍の拡大と同じくしたため、研究遂行、とくに沖縄での資料収集は困難にならざるをえなかった。最初の二年間はまったく訪問することがかなわず、本格的に調査を開始できたのは、期間を延長しての四年目からであった。しかしながら、制限にもかかわらず、前研究課題(『朝鮮民暦』における伝統知と近代知の交錯についての科学史研究、16K16337、2016-2019)で得られた知見とはまた異なる、東アジアにおける旧暦をめぐる知のありかたに関する知見が得られた。その内容は、期間を通じて学会や研究会等で発表しており、そこで得られた有益なコメントをふまえつつ、これから論文にまとめて発表する予定である。
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