研究課題/領域番号 |
20K12908
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
安西 なつめ 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 助教 (10768576)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 医史学 / 医学史 / 科学史 / 17世紀 / 学術雑誌 / デンマーク / ニコラウス・ステノ / トマス・バルトリン |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続きシュヴァインフルトで創刊された雑誌Miscellanea curiosa, sive ephemeridum medico-physicarum germanicarum academiae naturae curiosorum(1670-)の創刊から1680年までの10巻と、コペンハーゲンで創刊された雑誌Acta medica et philosophica Hafniensia(1673-1680)の全5巻を使用し、両雑誌に共通して収録された主題や報告者から雑誌の性質を考察した。本年度は特に医学(病理学)に分類される症例を取り上げた分析によって初期の医学自然学雑誌の性質と特徴が明らかになった。これらの成果の一部は講演(2022年度「世界哲学の日」記念講演会)および論文と研究ノートとして発表した。 またActa medica et philosophica Hafniensia創刊当時のコペンハーゲンの学術状況および創刊の背景について調査するため、同時期のコペンハーゲンを代表する解剖学者、地質学者であるニコラウス・ステノの当地での解剖講義350周年を記念したシンポジウム(Niels Stensen Symposium i anledning af 350-aret for hans indledningsforelaesning holdt den 29. januar 1673)に参加した。調査では現地の研究者と本研究テーマに関する近年の研究成果や書籍の刊行予定、関連文書翻訳の進行状況などの情報を交換した。加えてデンマーク王立図書館(Det Kongelige Bibliotek)所蔵の関連書簡、貴重書を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の課題は主として次の2点であった。1,対象雑誌における執筆者間の関連や情報伝達の経緯を明らかにする。2.同時期に創刊された大規模雑誌と組み合わせ、雑誌間の影響関係を明らかにする。以上の2点のうち1の課題に関しては抽出した数名の報告者の活動に着目することで確認することができた。2に関しては分析が十分ではないため次年度も解明に向けて追加の研究を行う。しかし対象雑誌を中心に共通の主題を取り上げた分析によって各雑誌の性質を昨年度より詳細に把握することができた。 また本年度は延期していた海外渡航を実行し、現地開催のシンポジウムに参加して研究者との情報および意見交換を行った。以上より研究の進捗状況としてはおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる次年度はこれまでに得られた研究成果に基づき、本研究の目的である初期近代における医学自然学雑誌の比較および創刊の背景と意義を明らかにする。そのためにフランスの『ジュルナル・デ・サヴァン』や、イギリスの『フィロソフィカル・トランザクションズ』などの大規模雑誌を対象とした先行の知見を組み合わせて研究を進める。またあわせて初期近代の知識体系における雑誌の役割についても考察を展開する。成果は主として学会発表や論文投稿を通して発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度からの研究推進の対応策として、現地調査に代替し現地図書館への資料複写依頼を計画していたが、現在所持している資料で分析が可能となったため複写依頼等での研究費の使用がなかった。 また国内旅費も計上していたが、研究会等が本年度もオンライン開催を継続していたことから国内旅費としての研究費使用が予定より少額になり、最終的に次年度使用額が生じた。 設定した研究目標をより精緻に達成するため、次年度は研究の更なる遂行に加え、主として学会発表、論文投稿を通して成果を発表する予定である。
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備考 |
大阪大学世界哲学の日記念講演会 講演タイトル:「切り開いて見えるもの、見えないもの―初期近代の医学と「想像の力」―」
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