17世紀に創刊された医学自然学雑誌を比較してその性質と影響を明らかにするため、本年は主に以下の2点に取り組んだ。 1. 1673-1680年の期間で『医学自然学報』と『コペンハーゲンの医学・哲学紀要』に共通する執筆者を抽出して分析し、両雑誌における創刊期の動向を明らかにした。分析の結果、当時デンマークで活躍した医学者の多くがトマス・バルトリンによる『コペンハーゲンの医学・哲学紀要』創刊以降、研究発表の場を『医学自然学報』から『コペンハーゲンの医学・哲学紀要』に移したことが確認された。これまでの考察を通じてデンマークの学術の展開における雑誌創刊の経緯と意義を指摘することができた。 2.1665(創刊)-1680年刊行分の『ジュルナル・デ・サヴァン Journal des scavans』を分析し、医学分野の報告を抽出して創刊期における掲載の傾向を明らかにした。また他雑誌から引用された報告について引用元を確認し、雑誌間の影響関係を整理した。分析の結果、医学に関する報告や図版の中に『医学自然学報』から引用、転載されたものが複数あることが明らかになった。これまで雑誌創刊の観点から研究が蓄積されてきた『ジュルナル・デ・サヴァン Journal des scavans』に対し、後発の『医学自然学報』および『コペンハーゲンの医学・哲学紀要』が与えた影響を明らかにすることができた。 以上の成果は学会発表や研究会等で発表した。
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