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2021 年度 実施状況報告書

古文辞派詩の新研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K12910
研究機関東京大学

研究代表者

高山 大毅  東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (00727539)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード古文辞派 / 漢文学 / 江戸漢詩 / 荻生徂徠
研究実績の概要

本年度は、徂徠学派の詩において重要な地名をめぐる表現について詳細に検討した。地名表現に関しては、昨年度までに一定の研究を進めており、以前より注目していた近江の鏡山を「石鏡」と呼称する表現について、用例をさらに集めて分析した。その結果、徂徠が李攀龍の詩と『古今和歌集』所収の歌の二つを踏まえて「石鏡」=鏡山という定型を創出し、徂徠学派はその定型を継承しながら、他の典故とも結びつけることで、新たな趣向を開拓していることが明らかになった。この研究を通じて、徂徠学派が言葉の多義性や類似に基づいた表現を好む一方で、視覚的描像に対しては関心が稀薄であることが分かった(時代が下るにしたがい、鏡山を詠んだ詩も、鏡山の視覚的描像を取り上げるものが増える)。視覚的描像に対する関心の乏しさは、天明狂歌などにも当てはまる特徴であり、18世紀日本の文学を考える上で興味深い論点であると思われる。この研究の成果は既に論文にまとめ投稿しており、査読を通過している。
また、本年度は、『唐後詩』の編纂に関わる稀覯資料を購入し、検討を進めた。『唐後詩』は、徂徠が明詩を中心に模範とすべき詩を選んだ詩集である。『唐後詩』は江戸期において一部分しか公刊されていなかったため、その全貌については不明な点が多い。しかし、今回発見された資料によって、その欠落を埋められる可能性が出てきた。徂徠学派が流行させた選集といえば『唐詩選』が著名であり、研究も多い。しかし、徂徠の構想では、『唐詩選』は彼の手になる『絶句解』・『絶句解拾遺』・『唐後詩』といった選集と併せて学ぶべきものであった。『唐後詩』の研究は、徂徠の文学上の制度設計を考える上で、非常に重要であり、今年度の成果を基礎にして、次年度以降、『唐後詩』の編纂過程の解明に取り組み、その成果を発表したいと考えている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

徂徠学派の詩の表現技法については、徂徠学派以後の展開も含めて見通しが立ちつつあり、具体的な表現技法に関する論文を執筆し、査読を通っている。『絶句解』については、学生に謝金を支払い、本文・注ともに入力を進めており、今後の研究の基礎となるデータが着実に蓄積されている。2021年度もコロナ禍の影響で、資料調査に赴くことができなかったが、貴重資料の購入などによって、研究は進展しており、おおむね順調に進展していると評価できる。

今後の研究の推進方策

『唐後詩』に関する貴重資料の検討によって、徂徠の明詩受容の具体層が明らかにできる可能性が高い。そこで、徂徠がどのような書物から明詩を受容したかを詳細に分析することで、徂徠学派の明詩(とりわけ古文辞派詩)の受容の特徴を明確にしたい。具体的な表現技法に注目することで、徂徠学派以降の江戸漢詩の流れについても、新たな知見を獲得しつつある。従来の研究においても、江戸後期の詩は描写重視であるといった指摘はされてきた。ただし、言語表現と視覚的描像の間の関係は、一筋縄ではいかない難しい問題をはらんでいる。視覚的描像と表現の関係についてさらなる検討を進め、江戸後期の詩との対比から、徂徠学派の詩風の特徴を明らかにしていきたい。

次年度使用額が生じた理由

研究上非常に重要な資料が予想していたよりも安価に購入できたたため、次年度使用額が生じた。次年度使用額を、学生バイトによる文献入力の謝金や関連する資料の購入に当てることで、研究の充実を図りたい。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] 「石鏡」=鏡山詠の展開―徂徠学派の定型表現2022

    • 著者名/発表者名
      高山 大毅
    • 雑誌名

      雅俗

      巻: 21 ページ: -

    • 査読あり

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公開日: 2022-12-28  

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