荻生徂徠及びその門人を中心とする江戸期の古文辞派の漢詩については、従来、千篇一律で魅力に乏しいといった評価が下されることが多かった。本研究は、江戸期の古文辞派が重視した明詩の選集をデータ化し、彼らがどのような詩を模範にし、詠作を行っていたかを丹念に検討した。これによって同じ古文辞派の詩人でも詩風の差異があることが明らかになった。また荻生徂徠らが、李攀龍の詩と和歌の二つに基づいた地名表現を行っていることが分かり、古文辞派の表現技法の魅力を示すことができた。以上のような古文辞派の詩の再評価は、これまでの近世日本文学史理解の図式の変更に繋がるものといえる。
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