本研究の目的は、蓼太が著した芭蕉発句の注釈書『芭蕉句解』(宝暦9年刊)と、その『芭蕉句解』を増補・訂正するかたちで蓼太の弟子である荘丹が著した注釈書『芭蕉句解参考』(文化4年刊)の分析を通して、近世期における蕉風俳諧受容の一端を明らかにすることにある。 生前には一俳諧師でしかなかった芭蕉だが、時代を経るほどに地位を高め、蕉風復興が叫ばれた近世中期には絶対的な存在として仰がれるまでに至る。多くの俳諧師がいたなかで、なぜ芭蕉と蕉風俳諧だけが飛び抜けて高い評価を得たのか。近世中期の俳人たちが模範とした芭蕉と蕉風俳諧とは何なのか。本研究では、それを古注釈の分析を通して明らかにすることを試みた。
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