研究課題
若手研究
平安時代の女性歌人・祐子内親王家紀伊を中心として、摂関期から院政期へ移行する時代の文芸活動を究明した。紀伊については、親族や文芸の交友圏について、旧説の誤りや見落としを指摘しつつ、母子二代の歌人、琵琶弾き等の新見を提示した。また紀伊周辺の文芸活動について成果をあげた。同所属侍女・菅原孝標女が、『更級日記』で私家集の表現内容を多く摂取していたことなどを指摘した。他に下野や橘為仲といった同時代の歌人が『万葉集』や漢詩の表現を用いて交流していたことを指摘した。
日本文学
平安文学研究において摂関期と院政期は個別に研究されがちであったが、紀伊という存在を端緒としてその移行や継承の様相が明らかになった。従来論文数が少なかった歌人や私家集にフォーカスがあたり、交流の具体相が明らかになったことも同様に意義深い。また紀伊は『小倉百人一首』72番の歌人である。紀伊に関する基礎的な伝記研究の成果は、一般社会の教育活動や文化活動にも有益な効果をもたらすものである。