研究課題
令和3年度は、近世から近代における『和漢朗詠集』の受容についての研究のうち、主として近世に出版された当該書の分析と、その流通にかんする考察を行った。前年度には、近世に刊行された『和漢朗詠集』の注釈書を中心に研究を行ったが、ここでは注釈書のみならず、この時期に出版された『和漢朗詠集』の諸本をひろく分析の対象とした。諸本の版面や、序文および跋文の内容、それから当時刊行された書籍目録類における本書の分類、そして諸資料の蔵版目録などを用いて分析したことで、その流通の様相が出版文化の発達とともにあったことと、それにより受容者層の拡大の様子を垣間見ることができること、さらに商業的出版上は「往来物」というジャンルの書物として位置づけられていたこと等の結果が得られた。これらの内容については、令和3年6月に開催された九州大学国語国文学会において「和漢朗詠集の整備と流通」と題して発表した。なお、この研究は、令和3年6月に発行された『語文研究』第百三十・百三十一号(九州大学国語国文学会)に掲載された拙著「注釈書の整備―『和漢朗詠集』を例として」の内容の一部をふまえたものである。ここで得られた結果は、近代における本書の受容についての考察につながるだろう。次年度も分析を継続しつつ、近世および近代における『和漢朗詠集』に対する人々の認識をより明らかにするために、書籍目録類や随筆類をはじめ、諸資料の収集と分析を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
本年度の研究結果は、次年度以降の分析に資すると思われるため。
次年度は、近世における『和漢朗詠集』に対する認識と、近代におけるそれとの比較を行う予定である。同時に、書籍目録類や随筆類をはじめ、諸資料を用いた分析も行う。
新型コロナウイルスの感染拡大により、旅費を使用しなかったことが主な理由である。次年度以降、調査が難しい場合であっても、引き続き資料の収集と分析を行う。
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語文研究
巻: 130・131 ページ: 326~341
佐賀大学地域学歴史文化研究センター研究紀要
巻: 16 ページ: 71~88