研究課題/領域番号 |
20K12922
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研究機関 | 群馬県立女子大学 |
研究代表者 |
板野 みずえ 群馬県立女子大学, 文学部, 講師 (70867001)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 新古今和歌集 / 京極派 / 叙景表現 |
研究実績の概要 |
本研究は中世和歌における叙景表現の表現構造を分析し、和歌史に位置づけ直すことを目的としている。中世和歌の中でも特に、研究代表者がこれまで研究の中心としてきた新古今時代を足掛かりに以後の時代の表現史を辿り、先行研究で叙景表現の分析材料として取り上げられることも多かった京極派和歌に至るまでの叙景表現の再検討を行うものである。 本年度は新古今時代から京極派の時代にかけての叙景表現に関して、以下の点から分析を行った。 1.叙景表現のうち、特に「身」と「心」との関係性において表現されているものにつき、どのような表現構造が見出されるかを分析した。この研究成果が「中世和歌の「身」と「心」」(寺田澄江・ 陣野英則・ 木村朗子編『身と心の位相:源氏物語を起点として』青簡舎、2021年12月)、「新古今時代の和歌における「身」」(『国語と国文学』第99巻第1号、2022年1月)である。 2.叙景表現には「心」を表現するために選び取られた「景」、という側面だけではなく「景」に接したことにより起こる「心」という側面もまた見られるのではないかという見通しのもと、京極派和歌における叙景表現の分析を行った。この研究成果を「京極派和歌における景と「心」――「向かふ」の周辺」(『樹間爽風』創刊号、2021年12月)としてまとめた。 3.中世の歌合や歌論に頻出する「面影」という概念について、実作に現れ出る「面影」という用例も踏まえつつ分析を進め、「幽玄」や「余情」といった概念との関係性を見出していくための道筋を定めた。この成果を「中世和歌における「面影」」(『群馬県立女子大学国文学研究』第42号)としてまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は研究課題の2年目にあたる。1年目に新型コロナウイルス流行のため校務に対応する時間が大きくなり研究に十分な時間を割くことができなかったことの影響がまだ尾を引いており、当初の計画通りの進捗とは言い難い。しかし、今年度は少し状況が落ち着いてきたこともあり、研究成果をまとめて投稿することもでき、研究の進展はあったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度得られた研究結果をもとに、更に中世和歌の叙景表現の分析を進めていく。 1.『新古今集』以後の勅撰集に見られる叙景表現の傾向について分析する。またその過程で、新古今時代の叙景表現についてさらに着目すべき要素が見られた場合にはその分析も同時に行う。 2.1で得られた分析結果を、これまでの研究成果を踏まえながら「叙景」という視点から和歌史の上に位置づけていく。 3.京極派の和歌に見られる叙景表現からその詠歌姿勢を明らかにし、先行研究で指摘されてきた京極派の「景」の捉え方を相対化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度も引き続きコロナウイルスの流行により年度末まで状況が読めなかったため、当初旅費として配分を考えていたものが結果的に未使用となった。学会が対面開催されず、また情勢が落ち着くまで調査に出向くことも避けたためである。 来年度に情勢が落ち着いていれば、この次年度使用額も用いて調査に出向き、そうでない場合には書籍などの資料収集費に充てる予定である。
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