研究課題/領域番号 |
20K12928
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
小泉 夏子 (徳永夏子) 日本大学, スポーツ科学部, 講師 (00579112)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 女性雑誌 / 投稿雑誌 / メディア / ジェンダー / セクシュアリティ / 少女 / 吉屋信子 / 近現代日本文学 |
研究実績の概要 |
本研究は、『令女界』(宝文館、1922年~1950年)を調査し、編集部と投稿者の交渉や、ジェンダー及びセクシュアリティに関する規範の生成と流動化の諸相を明らかにし、大正期後半から昭和戦前期において女性たちのメディアへの参加がどのような構造のもとで可能となったか、あるいは制限されたかを解明することを目指している。 『令女界』は、未だ基礎研究が整備されておらす、所蔵する図書館もばらばらで通覧することが難しい。研究開始にあたり、まずは資料を収集し、特徴を洗い出す必要があったが、2020年度は、新型コロナウイルスの感染の流行によって、予定していた資料の収集・調査を十分に行うことができなかった。そこで、2021年度は前年度調査予定だった『令女界』10 巻(1932年)~16 巻(1938年)を収集し、分析を行った。調査を通じて、読者に対する編集側の統制の様相や、複雑な状況の中で女性投稿者たちが表現の場を獲得していくさまが明らかになった。さらに、吉屋信子の全集未収録作品の発掘と、『花物語』から流行作家へと移行していく吉屋の動向を確認することができた。 吉屋信子の小説については、2020年度に前倒しで分析を進めており、本年度は専門家を招いて『令女界』と吉屋信子に関する研究会(2022年2月18日(金)実施、オンライン形式)も開催した。資料の調査と研究会で得た知見をいかし、吉屋信子の作品と同時期の投稿文との関係性や、『令女界』のセクシュアリティ表現がどのような文脈のなかで発せられ、どのような意味を産出したかを明らかにした。 また、竹久夢二美術館へ赴き、竹久夢二の資料を調査した。竹久夢二は、『令女界』へ挿絵と文学テクストの両方を寄稿したが、彼の活動を調査することで、視覚的イメージが文字テクストと接合することで現出した『令女界』の女性像の一端を解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスの感染拡大によって、2020年度に予定していた資料収集や現地調査の一部を実施することができなかったが、2021年度に前年度収集予定だった資料や調査を行った。また、前年度に2021年度に実施予定だった課題の一部を前倒しで行ったため、結果的におおむね計画通り進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、前年度に収集しきれなかった一部の資料と、『令女界』17 巻(1939 年)~22 巻(1944 年)の収集・調査を行う。 加えて『令女界』の投稿文の表現方法とそれに対する指導の詳細を調査し、女性投稿者と編集部の関係性を分析する。女性たちが表現の場を獲得するために編集部の管理や雑誌の規範とどのように交渉したか、さらに、読者層を女学校上級生に限定することで、『令女界』のジェンダー規範がどのように変化したかを分析し、規範が脱構築的に生成されていく過程と、言説の論理を明らかにする。 また、すでに分析を行っている同時期の女性雑誌『婦人画報』(婦人画報社ほか)や姉妹誌の『若草』(宝文館)の投稿欄と比較し、『令女界』との違いや、重なりについて検証する。 新型コロナウイルスの感染状況によっては資料収集が困難になる可能性もあるだろうが、入手方法や調査時期を工夫し、計画の遂行に努める。また、研究会の開催も状況に応じてオンライン形式等を検討し、柔軟に研究活動を推進していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染流行の影響によって会議の開催方法を変更したために、会議開催にかかわる諸費用や、ゲストスピーカーを召喚するための経費が当初の予定から変動した。2022年度は次年度使用額を用いて、昨年度実施がかなわなかった一部の会議を実施する予定である。会議の開催については、今後も状況に応じて、開催時期や、回数などを変更しながら柔軟に対応していく。 また、資料収集や現地調査についても、新型コロナウイルスの感染流行の影響によって一部実施できなかった。2022年度は、次年度使用額を用いて残りの資料収集と現地調査を行う。感染防止対策を十分に講じて効率的に資料収集や現地調査を行うと共に、古書の購入、図書館等のレファレンスサービス、データーベース、郵送複写の活用、また各機関が社会状況の変化に応じて新たに設けた複写や閲覧等のサービスを積極的に利用して研究を進める。
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